ISSUE エネルギー

4 years ago - 2012.06.03

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「太陽光発電で重要なのは、高度に地産地消であること」独シーメンス社が今年中に水の電気分解装置の実機をお披露目予定! [R水素アクションNOW]

Some rights reserved by Caveman Chuck Coker

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ドイツにシーメンスという会社があります。創業1847年、連結売上高14兆円、従業員40万人の泣く子も黙る巨大企業です。ドイツで稼働する原発17基すべてを製造したこの会社は、2012年内に世界最大級の「水の電気分解機」をお披露目することにしています。

この動きの真意はどこに?R水素ネットワークが独自に入手したプレゼン資料を解読してみました。

原発ビジネスにピリオド

2011年9月18日、CEOペーター・レッシャー氏は、複数のメディアを通じて世界に脱原発宣言をしました。

「われわれにとって、歴史のこの章は終わった。原発建設や融資に責任をとることには加わらない」

ドイツ政府が、2022年までの原発全廃を閣議決定した6月6日の、約3ヶ月後のことでした。

エネルギーシフトのカギは「ストレージ」

プレゼンテーションは、脱原発宣言の10日後の9月27日付けのもの。2012年から、1時間に平均100kW(ピークで300kW)の電力を水素に変えられる装置のデモンストレーションをはじめ、2018年には100MWまで対応できるようにするとしています。

開発の背景にあるのは、加速し続けるエネルギーシフトの大潮流。DENA(ドイツエネルギー機構)は、太陽光発電電力量が2015年までに2011年の倍の38GWに増えると予測しています。これだけのいつ発電されるかわからない電力を、消費者の元に届けた経験を持つ送電網は、世界中どこを探してもありません。

同社がこのプレゼンで、「太陽光発電で重要なのは、高度に地産地消であること」とする所以。長距離送電網に頼らずに、つくったところの近くで貯めて使うのがいい、ということです。つまり、再生可能エネルギーの命運は、ストレージ技術が握っているのです。

siemens社のグローバルサイト。日本語のWEBサイトには、「私たちは、オイル&ガスから発電、送配電にいたるエネルギーサプライチェーンすべてにおいて独自の高効率製品、ソリューション、専門知識を提供できる世界唯一の企業です。」とのフレーズが。

siemens社のグローバルサイト。日本語のWEBサイトには、「私たちは、オイル&ガスから発電、送配電にいたるエネルギーサプライチェーンすべてにおいて独自の高効率製品、ソリューション、専門知識を提供できる世界唯一の企業です。」とのフレーズが。

10GWh以上を貯める選択肢は水素のみ

そんな中、同社は1時間に100MWh以上の電力を貯める方法の選択肢は揚水発電・空気電池・水素。10GWh以上の電力のストレージにおいては、実現が見えている唯一の方法が水素だという見解を示しています。

このうち、揚水発電と空気電池は自然の地形を利用せざるをえないため、すでに建設できる余地がないことから、水素でためる、つまりR水素に注目しているというわけです。また、再生可能エネルギーをストレージする場合、キャパシティの絶対値だけでなく、発電量と電圧の激しい変動幅への対応力が問われるとのこと。ここでも、水を電気分解して水素にして貯める方法(つまりR水素)が有利なのだそうです。

さらには、一度水素にしてしまえば、効率ともちのいい輸送エネルギーにもなります。これについては、HONDAのソーラー水素ステーションの記事をご覧ください。

輸送部門と産業部門のエネルギー供給にコミット

技術の成長度合いは、すでに実用化の一歩手前まできています。同社では、1998年に研究開発をスタート。2010年10月には、水電解式水素製造装置専門のビジネスユニットを立ち上げています。すでにラボでは40000時間稼働しており、耐久性のめども立ちつつあるとか。

原発という旧兵が去り、再生可能エネルギーが台頭するにつれ、この水の電気分解装置のように、世界中のラボで静かに寝息を立てていた関連技術がゾクゾクと目を覚ますのでしょう。

いずれにしても、バリバリの営利企業が「再生可能エネルギー電力をどうやって貯めるかをここまで真剣に考えているのですから、再生可能エネルギービジネスが一部の環境派の慈善事業ではないことだけは、はっきりしています。周回遅れの日本のエネルギー業界に、第二のシーメンスは現れるでしょうか…?もちろん、ドイツ政府による「脱原発宣言」や再生可能エネルギーの普及政策が、シーメンスのR&D戦略に強力に影響を及ぼしていることは疑いようがありません。

では最後に、これだけは覚えていって!のまとめをどうぞ。

まとめの5フレーズ

1. エネルギーをどう貯めるかが、持続可能なエネルギーシナリオのキー。
2. 水素は10GWh以上の電力を貯める、実現が見えている唯一の方法。
3. 水電解装置は剛健でダイナミック。気まぐれな風や太陽についていける。
4. シーメンスは大容量水電解装置の開発によって、輸送部門と産業部門のエネルギー需要にコミットする。
5. グリッドからあふれ出るエネルギーを使ったR(再生可能)水素は、燃料電池モビリティを可能にする。

writer ライターリスト

浅倉 彩

フリーランス編集者・ライター。エネルギー問題をメインテーマに取材・執筆・講演・企画など行う。NPO法人R水素ネットワーク コアメンバー。この他、「シマリタ」や「イオンカ」など、オルタナティブを提案するプロジェクトを仲間とともに進行中。沖縄在住歴1年とすこし。twitter : @ayaatagrica

partner パートナーリスト

R水素ネットワーク

R水素は、水の中にある水素をパートナーにすることで再生可能エネルギーのポテンシャルを高める、持続可能なエネルギーのかたちです。 NPO法人R水素ネットワークの公式ウェブサイトはこちら

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