ついにAppleも本格活用!メガワット級からポータブル、クルマまで、燃料電池の勢いが止まらない! [R水素アクションNOW]

Fireman's Fund社に設置されたBloomEnergyの燃料電池 photo by bloomenergy

Fireman's Fund社に設置されたBloomEnergyの燃料電池 photo by bloomenergy

燃料電池と呼ばれる水素発電機の普及が勢いを増しています。中には「コストが高い」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、ここ10年で急速に技術革新が進み、普及が進むほど性能が向上しコストが下がるポジティブスパイラルに入りつつあるのです。そんな中、あのApple社が、メイデン(米国ノースカロライナ州)で運営しているiCloudのデータセンターにも、燃料電池を設置することがわかりました。

googleやadobeも採用したBloomenergy社製

Appleに燃料電池を提供するのは、米国カリフォルニア州に本社を置くBloomenergy社。大容量の燃料電池を得意としており、これまでにもAdobeやebay、Walmart、Googleなど、そうそうたる企業が同社の燃料電池を導入しています。

地元紙の報道によると、4.8MW(一般家庭約1,600軒分)という規模は米国最大。米国エネルギー情報局が発表している燃料電池のコストはメガワットあたり670万ドルなので、これをもとに試算するとAppleはこのプロジェクトに3,000万ドルを投資すると見られています。

なお、地元シャルロットの電力会社Duke Energyには、2007年の州法で一定量のクリーン電力を購入する義務が課せられています。Appleは、同社への売電を有利に行うために、ゴミの埋め立て地から発生するメタンガスやその他のバイオガス事業をプロデュースすることで、実際に発電に使う天然ガスによるCO2排出分を相殺し、クリーン電力として認定を受けるもよう。

ノースカロライナ州には、燃料電池代の約半分を州が負担するカリフォルニア州のような助成制度はありません。従って、受けられるのは連邦政府からの30%の税制優遇のみということになるため、なぜAppleが3,000万ドルものコストをかけて燃料電池を導入するのか。謎めいていて面白いと、先出の地元紙は報じています。

燃料電池は汎用性が高い

これが燃料電池です。photo by Bloomenergy
これが燃料電池です。photo by bloomenergy

燃料電池が優れているのは、持ち運べるものから産業用のエネルギーをまかなえるものまで、あらゆる規模の電力需要に対応できること。その秘密は、それぞれに触媒のついた正極と負極、間にある電解質を重ねただけというシンプルな構造にあります。このウェハースのようなものを、必要に応じて重ねるだけで、自由自在に発電能力とサイズをコントロールできるのです。

Lilliputian Systemsのポータブル燃料電池  photo by Lilliputian Systems

Lilliputian Systemsのポータブル燃料電池 photo by Lilliputian Systems

例えば、最近Lilliputian Systems社から発売が発表されたポータブル燃料電池は厚めのスマートフォンほどのサイズで、iPhone4なら10回〜フル充電できるというもの。プレスリリースによれば、USBケーブルの差し込み口から任意のモバイル機器を充電でき、バッテリーよりはるかに安く長持ちするそうです。飛行機にも載せられるので、旅行時に電源ケーブルやアダプターを携帯したり、移動先でコンセントを探してさまよう必要がなくなるかもしれません。

スターバックスのコーヒー程度の価格で売られるというライターサイズの専用カートリッジを詰め替えて使います。カートリッジの中身は残念ながら純粋な水素ではなく、水素と炭素の化合物ブタン(C4H10)。石油などからつくられるので、R水素ではありませんが…。価格や発売日は年内に公表されるとのことです。

クルマに積めば「燃料電池車」

また、燃料電池は電気自動車の電源としても使えます。バッテリーで走る電気自動車よりもはるかに航続距離の長い、燃料電池車のことです。業界では、日米欧の大手自動車メーカー各社が2015年をめどに販売開始を目指しているとされていますが、一部は2014年に早めるのではという噂もちらほら。

さらに、ここへきて、ヒュンダイ自動車(韓国)が2013年に1,000台規模で製造し、水素ステーションインフラが整いつつある欧州市場に打って出るというビッグニュースが!他にもスイスの時計メーカーswatchも、燃料電池車を開発中という話もあります。

Hyundai ix35 fuel-cell

Hyundai ix35 fuel-cell

今後ますます、燃料電池がエネルギー界を席巻していくことは間違いなさそう。水素と空気中の酸素の化学反応で発電し、水しか排出しない(※)クリーン電源として、モバイル機器、工場、クルマと八面六臂の活躍を見せてくれそうですね。

※発電に必要な水素を天然ガスやブタンなどからつくると、水素製造時にCO2を排出します。トータルで水しか排出しないのは、化石燃料ではなく水から水素をつくる場合。中でも、R(再生可能)エネルギーでつくった電気で水を電気分解する場合です。

燃料電池はソーシャルデザインツール

燃料電池は、来るべきR水素社会の言わばアプリケーション。これが先に普及し、発電に不可欠な水素の需要の高まりと平行して、再生可能エネルギー発電の普及が進み、電気のまま送電線で配りきれない電力が増えていきます。

その2つの支流が「水素ストレージ」という合流地点で出会うとき、「R水素という答え」が大潮流となって、目に見えるかたち社会を変えていくでしょう。配りきれない電力で水を電気分解すれば、燃料電池に必要な水素をつくって貯めておけるのですから。その意味で、燃料電池はR水素社会になくてはならない重要なソーシャルデザインツール。今後も、最新の動きをウォッチしていきます!