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「みんながもっと声を出していける社会をつくる、きっかけになりたい」ネット選挙解禁を目指すOne Voice Campaign 原田謙介さん&江口晋太朗さん[インタビュー]

このインタビューシリーズは、「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア」を実現して、よりよい未来を自らの手でつくりだしている方々へのインタビューをお届けします。

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原田謙介さん(左)江口晋太朗さん(右)

こんにちは、greenz.jp発行人鈴木菜央です。

今回で2回目となるインタビューシリーズですが、今回は、みんなが政治に参加できる社会をつくるために、ネット選挙運動の解禁を目指す活動を行なっている「One Voice Campaign」のメンバーである、原田謙介さんと江口晋太朗さんにお話を伺いました。

今回は編集アシスタントの木村絵里と一緒に話を聞いていきます。

One Voice Campaignとは?

鈴木菜央(以下鈴木) こんにちは!よろしくお願いします!!

江口晋太朗(以下江口)、原田謙介(以下原田)よろしくお願いします!

鈴木 さて、One Voice Campaignってなによ?というところから、お願いします。

原田 はい。One Voice Campaignの目的の1つとして、「インターネットでの選挙運動ができるように法律を改正すること」です。いまの日本は、ネットでの選挙運動というものが法律で禁止されている状態なんです。

しかし、その法律を一部改正する法案があって、その法案が通れば法律が変わり、それによってこれまでのビラやポスターなどに加え、インターネットによる選挙公報の活動ができるようになります。その法案が今審議されていない状態なんです。つまり、それが通ることでネット選挙運動ができるわけです。

ネット選挙運動というのは、「選挙期間中にウェブページの更新やメールのやりとりをすることができますよ」ということです。

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http://onevoice-campaign.jp/

鈴木 逆に知らなかった人が多いと思うんですけど。「ネット選挙って禁止されてたの?」って。誰でもネット使ってるじゃないですか。こんな状況で「禁止されているなんて夢にも思わなかった」みたいな人も多いのでは?

江口 そうですね。まず、ネット選挙の現状を話しましょう。日本には「公職選挙法(以下、公選法)」という法律があって、今の現状だと選挙が始まる告示日から投票日までの、選挙期間にもよりますがだいたい約2週間前後の間は、ウェブページの更新とかTwitterとかFacebookなどのウェブサービスを使うことが、立候補している候補者は禁止されているんです。

もちろん、ぼくら一般の人も、特定の候補者を応援したりする行為もインターネット上では禁止されています。

木村絵里(以下木村) 全然知らなかったです。「ネット選挙」って聞いて、最初はネットで投票することだと思っていました。

江口 ネット投票とは違うんですよね。僕たちが目指しているのは選挙運動をネットでもできるようにすること。現状では、選挙期間中にはメールもしちゃダメなんです。ネットと呼ばれるものはすべてダメなんですよ。

選挙活動では、ビラの枚数も決まっていて、すべてのビラに、誰それのビラです、と認めた証拠に判子というかシールみたいなのを貼らなければいけない。ビラの枚数も決まっている。選挙活動も朝の9時から夕方8時まで、その間しか街頭でマイクを使ってはいけない、など色んな規制がある。

先進国の中でネットが選挙活動に使えないのは日本ぐらい

鈴木 greenz.jpでは、3年前の2009年に「『Twitter』も『Flickr』も『YouTube』も『iTunes』も、すべてを使うオバマ大統領の新戦略」と題して記事をアップしているんですが、「ネットと呼ばれるものすべてダメ」とは、greenz.jp読者からしたら信じられないくらい時代遅れな感じがするんだけど、相当古い法律なんですか?

江口 そうですね。公選法が制定されたのは昭和25年です。それがいまだに一度も改定されたことがない。もともとはお金を持っている人・持っていない人の差を無くし、公正な選挙運動にしましょう、という意味でビラもポスターの枚数も制限があったんです。当時は大量にビラを撒くには大金が必要だったから、ある程度制限を決めて公正にする必要があった。

しかし、いまやネットは誰にでも、自由に、極めて安価に利用できる時代になりました。それに対して制限をかけることにどれだけの意味があるのか。ある意味、選挙活動に対する権利を阻害しているのではないか、とすら思います。もっと言うと、僕らにとっての知りたいと思うことを知ることができない状況を作り出している。僕たちの「知る権利」を阻害しているんじゃないか?

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5月23日に開かれた「One Voiceサミット」には大勢の人が集まった

江口 いまや、多くの世代にとって、ネットはもはやインフラみたいなものだと思います。TwitterとかFacebookとかメールマガジンとかを使って情報収集をしたりコミュニケーションをとって、どう行動していくのかを考える人たちが多くいます。そして、それは特に若い人達は、それを普段から使用しています。

僕たちから見たら、選挙が始まってもネットの世界ではとくになにも起きず、誰がどんな考えを持っているのか、誰に投票すれば良いいのかわからないまま、いつのまにかよくわからない人が当選している。若い世代からみたら、そうなってるんです。こういう状況は、民主主義における選挙の公平さの観点から、問題だと思います。

鈴木 なるほど。これはほんとに、日本の未来にかかわる問題だね。

原田 おとなり韓国では、最近ネット選挙運動が解禁されて、今年4月に行われた総選挙で、ネット選挙運動がものすごく白熱しました。たとえば、投票に行った人が投票所で自分の顔写真を撮影して、SNSにアップして、「みんなで投票に行こうぜキャンペーン」みたいなものが自発的にうまれたりなど、様々な動きを見せていました。

鈴木 それは盛り上がりますね〜!

江口 候補者による選挙運動だけでなく、僕ら自身も、もっとネットによる活動ができます。例えば、特定の議員を支援しプロモーションしたいと思っても、いまは勝手にしてはいけない。他にも、選挙期間中に、政策の比較サイトや候補者があげる動画をまとめたりなど、選挙期間に様々な活動が行えるようになることで、もっと政治や選挙が面白くなる。しかし、それが今はまったくできない状況なんです。

鈴木 韓国ではそれが解禁されて若者の選挙に関する関心が高まったんだね。

江口 そう思います。選挙って、民意を反映するものだと思うんです。僕らがこういう社会でありたいという思いが唯一反映されるものなのに、僕らは、表現を許されていない。僕らが声をあげ、社会をよくしたいと思う気持ちが反映されないんです。

鈴木 アメリカでは、選挙があるたびに、ネットを活用したさまざまな新しいカタチの選挙活動が出てきて、インターネットの可能性、個人とか組織のあり方や可能性が大きく広がって、社会が前進している感じがするんですが、日本では…一歩も進んでいない(笑)。

江口 先進国の中でネットが選挙活動に使えないのは日本ぐらいじゃないかな。

鈴木 え、本当に!? これは、もったいないことだよね。若者の投票率の低さや、政治への無関心とか、「どうせ変わらないよ」みたいな風潮を作り出している大きな理由なんじゃないかな。とにかく、大きな機会損失だよね。

じつは、法案成立まで、あと一歩

鈴木 話を少し変えるんだけど、なぜ、今キャンペーンを盛り上げようとしているんですか?なんだか突然のような感じもしますが。

原田 実は、2010年に与野党ともにこの改正法案は一回OKを出して合意されているんです。法案が提出されて、でもそれが最終的な本会議まで行かず、継続審議になっているんです。誰も邪魔する人はいないのに、なんでこれ通さないの?と。

鈴木 法案に反対している議員がいてぶつかり合っている、というよりは、状況的には法案が通る可能性が高い、ということ?

原田 恐らく通したくない議員はいると思うんですけど。

江口 プライオリティの問題ですね。このことに関して、国民の関心が低いから、放置しておこうか、という状態だと思います。

鈴木 放置した方が、都合がいいと思っている人もいるんだね。資料を見たら、ネット選挙解禁の議論は1996年にすでにされているんですね。

原田 インターネットが流行り出した頃から、そもそもインターネットが(選挙運動に)使えないんだろうか?という話は起こり始めていたんです。

江口 そのあとSNSが広く使われるようになり、2009年にもTwitterが流行りましたが、海外ではオバマがTwitterを最大限活用したというのは大きくて、じゃあ何で日本は使わないの?と、という議論が出てきました。もともと議論されていたものにさらに上乗せされたという感じですね。

2009年の時点では、Twitterは一般層にまでは普及していなかったですが、議員さんはけっこう積極的に使っていた。けど、それを選挙に活用する?ってなったときに、日本ではまだSNSリテラシーが追いついていない状況があるので、Twitterは禁止しよう、みたいな曖昧な論点があったんですね。それから3年たって、2012年になるころには色々な出来事もありインターネットやSNSが一般的に普及したし、SNSリテラシーもだいぶ身に付いてきた中でそろそろ解禁してもいいんじゃない?って。

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鈴木 国会では継続的に何回か話されているのに、それが審議されない理由って何でしょう?

原田 優先順位が低いっていうのが圧倒的な理由です。議員の定数を減らすかどうか、などの議題が優先的に話されている状況ですね。

鈴木 逆に言うと、世論が盛り上がってくれば、優先順位が上がって審議される可能性が高くなると。

原田 そう信じています。

ほぼ、ネット選挙は始まっている

鈴木 最近では総務省からの通達で、各地の選挙管理委員会のウェブサイトで、立候補した選挙候補者を掲載しても良いという通達が出たみたいですね。3.11もあったし、政治家や官僚の間でも、インターネットに対する見方もだいぶ変わってきたと思うんですが、どうでしょうか?

原田 震災があり、たくさんの被災された方々がもともと住んでいるところから離れて、各地バラバラに暮らしている現状があります。そうなると、自分の自治体の選挙のときは、誰が立候補したのか、どんな考えなのかなどを知ることが大変むずかしい。候補者はいろんなところに行けませんからね。これはネットがないと公正な選挙を行うのは難しいということで、候補者を知るために、「選挙公報を各選管のウェブサイトに載せていいよ」ということになった。

掲載と言っても、PDFそのままで、白黒じゃないとダメだし、動画とかもダメだし、本当に紙が上がっているというだけ。そこはもう一歩行ってほしかったとも思いますが、そうやってインターネットを使おうという流れは近くまできている状況だとは思います。

江口 とは言え、ネットにそういう情報を載せているっていう時点で、ほぼネット選挙は始まっているんですよ。地方自治の選挙では、選挙期間中でもTwitterを使って宣伝している人も一部いたりします。つまりは、現状ではすごく曖昧で、でも、みんな当たり前だと思っている。だからこそ、「結局、どうなの?」「使っていいの?いけないの?」ということを、はっきりさせたいんです。

議員にも私たちにもメリットがある

鈴木 ネット選挙が解禁された場合の、メリットって何でしょう?

江口 議員のメリットと、有権者のメリットの両方があります。現状では、街頭演説をやっても、聞きに来る人は近所の100人程度。もっと言うと、街頭演説なども時間帯が決められているため、日中の昼間や夕方しかできない。それじゃ、普段仕事をしている人たちにはまったく届かない。けれども、街頭演説をUstream中継などで行えば、数千人、数万人の人に考えや主張を届けることが出来ます。またアーカイブしたりYouTubeにアップすることで、リアルタイムに視聴できなくても、後からどんな理由で立候補したか、どういう話をしていたかなどを多くの人に知ってもらえます。

また、選挙期間中はメールも禁止なので、僕らが質問しても返信が返ってこない。例えば、子どもの病児保育について議員に質問したとして、きちんとした答えが返ってくれば「この議員はこういうことを考えているんだ」とわかるし、その議員に投票しよう、と思うことにつながるかもしれない。

ところが、普段ではメールを返していた議員が選挙期間になるとメールの返信がこなくなる。つまり、ビラや演説などといった一方的な情報しか得られないので、議員にとっても有権者にとっても、大きな機会損失なんです。

鈴木 一般の世界では当たり前の双方向のコミュニケーションができないのに、それで選挙と言えるのだろうか、ということなんだね。

江口 逆に言うと、議員さんにとっても、一方的に言われっぱなしになってしまうんです。

鈴木 なるほど。例えば誹謗中傷とかに対して?

江口 そう、反論できないんです。つまり、インターネット上で様々な流言が飛び交っても、それを反論する武器をもたず、言われもない嘘がでまわることになってしまうんです。結果、デマや誹謗中傷だけが広まってしまう。これは、議員にとってもすごくデメリットだと思うんです。

しかし、ネット選挙運動が解禁されれば、議員も「そうじゃない、僕はこの問題にはこう思っている」とインターネット上で発言したりして、根拠を証明できれば反論できるんです。

鈴木 ネットの世界って昔よりもはるかに、自浄作用が働くようになって来てますよね。

江口 デマも、そういう情報が出てきた時に「じゃあソースはどこだ」と辿ることができるし、みんなのネットリテラシーも高まってきているので、議員さんが懸念しているほどになりすましとか誹謗中傷の流布が横行することにはならないと思います。今や、ネットのほうが、なりすましをしてもバレやすいのではないでしょうか。実名利用のSNSも増えてきました。議員さんが思うほどネットは怖いものではないのに、怖いという固定観念だけがあるんです。

鈴木 そのイメージってけっこう強いのかもね。

江口 そうじゃないんだよ、ネットを使うことは議員にとっても僕らにとっても、メリットがあるしポジティブなことなんだよ、と訴えていきたいと思っています。

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私たちの声が社会を変える

江口 ネット選挙運動の解禁を目指すことももちろん僕らの目標なんですけど、それだけじゃなく、みんながもっと声を出していける社会をつくる、きっかけになりたいんです。「こういうのは間違っている」と思ったら、声を上げていこう、「自分たちの社会だよね」という当事者意識を持って、社会と向き合おうという思いです。

「One Voice」という名前も、僕らの声が社会を変える、僕らの意識で社会を良くしていこうという思いをこめて名付けました。特に、僕たち若い人の声は、いまの社会ではまったく反映されていません。しかも、社会に対して不平不満ばかりを言うのではなく、前向きに、ポジティブに社会をよくしていこう、そして、さまざまな世代と一緒に創り上げていこう、という気持ちがあります。

原田 今回の私たちのキャンペーンは、ネット選挙運動を解禁して、選挙を盛り上げたいんではないんです。「政治」について考えてみると、選挙期間以外がほとんどなんですよね。

その間に、ホームページをきちんと更新して有権者にちゃんと情報公開をしている候補者や、TwitterとかFacebookで市民と一生懸命つながってやりとりしていた候補者が、選挙期間が始まるとぱたっとそれが出来なくなって、選挙の時だけぽっと出てきた、選挙に長けた候補者に負けるというのは、まっとうなことではない。選挙の一週間だけで決まるのはおかしい。選挙期間以外での様々な活動を反映し、それまでの活動の成果を発表し、次に繋げるのが選挙なんです。だからこそ、普段の活動と選挙とはつながっているんです。

4年間なら4年間を見ての結果だし、それを見るための選挙だというのを伝えるためにも、ネット選挙が必要だと思っています。そして、そういう視点をもって、長い期間で議員を応援したり、僕ら自身も政治や政治家と向き合い、社会について考え、未来について考えていく意識をもってもらいたいと考えています。

江口 選挙期間だけが注目されるけど、原田くんも言ったように、政治家は当選してから次の4年間をどう活動してきたかを、選挙期間中に有権者に示す義務がある。その表現の方法としてインターネットを使うべきだと思うんです。

選挙期間は、「僕はこういうことをやってきた」という、今までの活動をわかりやすくパッケージ化して伝える期間だし、「この選挙で受かったらこういうことをします」という「宣言」をする場でもある。政治活動全般を整える機会を、何で禁止されているの?と。

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「One Voiceサミット」に参加した議員の方々

お金と権力を持った候補が当選しやすい社会から、共感力がある候補が当選する社会へ

鈴木 僕がグリーンズをやっている理由は、一人ひとりが主役になれる社会を作りたいなと思っているからなんです。みんなが主体的に政治をどうしていったらいいか、選挙制度をどうしていったらいいか考えて変えていけば、日本は断然面白い国になりそうですね。だから、One Voice Campaignのような活動はグリーンズとしてもすごく応援したいし、一緒にやっていきたいですね。

江口 そうですね、今までは、お金とか権力を持った人が選挙に当選しやすかった。これからは、例えば僕が出馬すると仮定した場合、僕のことを知っていて、そして応援してくれる人がいたら、僕と一緒に「どうやったら当選するか」について考えてくれたり、「江口なら本当にいいことをやってくれる」と信じているならば、その人の思いに共感して動いてくれる。その人が持つ魅力や可能性が、まわりの人を動かす。

政治をしていくのに一番必要なのは、そうした「共感力」なはずなのに、現状のように「一方的な情報を伝えて終わり」っていうのは、全然コミュニケーションになっていないし、共感すらできにくい。現状の制度が、政治家が一番必要としている、「共感力」を阻害しています。

鈴木 確かに。いい意味で、元のあるべき姿に戻るということなのかもしれないね。

江口 そう、かつてはこの人だったらと思って応援したり投票したりということで、昭和25年にそういう法律ができたけど、今の時代には、今の時代の、その人を応援する方法ってたくさんあると思うんです。いろんな手法ができるはずなのに、それらが全く使えず、昔のままというのでは、政治家にとっても僕ら一般の市民にとってももったいない。それを時代に合わせてアップデートしないといけないんです。

キャンペーンがはじまったきっかけは?

鈴木 One Voice Campaignの賛同者リストをみると、グリーンズでもお馴染みのイケダハヤトくんとか、色んな人が関わっているね。

原田 立ち上げの話をしますね。僕は学生の時の2008年に20代の投票率向上をめざす「学生団体ivote」を立ち上げて活動をしていました。各党の国会議員を居酒屋に呼んで、若者を40人ぐらい呼んでただ飲むだけの居酒屋ivoteなど、これまでと違い、もっと僕らと政治を当たり前にしていくための活動を仕掛けていました。

以前、グリーンズさんにも取り上げていただいた、選挙のときの投票に行く宣言をしたら、選挙期間になったら投票を促す自分宛のリマインドメールを使った「ivoteメールプロジェクト」なども、おこなっていました。

鈴木 はい、覚えてますよ!

江口 僕は、原田が「ivote」の活動をした頃に、政治家の事務所にインターンを派遣する「ドットジェイピー」経由で政治家のインターンをしていました。その頃僕は大学に入りたてで、それが僕の第一歩でした。原田とも、それがきっかけで知り合い、それ以降、ivoteの活動にも手伝ったりなどしていました。

鈴木 そうだったんだ。「何で急に江口くんは政治のことやってんだろ?」と思っている人もいると思うけど、これを聞いたら納得するね。

江口 もともと2008年くらいからそういった活動をしていたので、知ってる人は知ってるんですけどね。たしかに、今のメディアや活動の僕だけを見ると、ふと思う人もいるかなと思うんですが、僕としては「政治」という軸は変わっていないんです。ただ、その手法や方法を色々と試行錯誤していっているだけなんだと僕は思っています。

原田 OneVoiceの立ち上げに関して言うと、今年の3月終わりぐらいに、政治情報サイト「ザ選挙」を運営している高橋茂さんと、2010年参議院選挙の際にTwitter模擬選挙という企画をおこなった「Good Net Voting」代表の佐別当隆志さんのお二人から、ほぼ同時に「ネット選挙運動解禁にむけてなにかやろう」という話を頂きました。

僕ももともと問題意識のあった分野でもあり、ネット選挙運動だけでなく、もっと社会問題や政治などに対して声をあげる仕掛けをしていきたいとも考えており、僕だけでなく江口や、今回のコンセプトなども作った高木新平くんや色々な人を誘ったりして、これまでの政治な分野以外の人も巻き込んで大きな動きにしていかないと、といことで「One Voice Campaign」という名前として、立ち上がりました。

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また、このキャンペーンを立ち上げたもう一つの理由があります。今、国会で18歳から投票権を与えようという法案を話し合っていますが、18歳に投票年齢が下がると、若い人がもっと入ってくるのにもかかわらず、若い人が普段情報を得ているインターネットが選挙活動に使えないというのは、余計におかしいと思うんです。

若い人を入れるなら若い人に情報に与えるためのインターネット投票を解禁する。そうじゃないと、今のまま「18歳選挙権」になっても、結局18〜20歳の人はほとんど投票に行かず、このままでは「やっぱり若者は投票しない」と言われる結果になるかもしれない。それは、悔しいですよね。意識を上げる手段としてネット選挙が必要だと思っています。

鈴木 なるほどね。

原田 で、やろうと言い出して、すぐにFacebookグループを立ちあげて、色んな人に声をかけて、協力してくれるという人をグループに入れて、毎日議論や意見をだしあったりして、どうすれば社会全体が盛り上がっていくか、と話し合いました。

しかし、僕らがただ声を上げても、ネット選挙解禁には繋がらない。いろんなところでネット選挙運動への関心を高めて、色んな人がネット選挙運動も含めたさまざまな問題に対して考えるきっかけを作っていくべきだろう、という結論になった。その結果、みんながネット選挙運動が解禁されたらもっとこういう社会になるよね、と考えてもらえるのが一番嬉しいんです。僕らだけだと限界があるけど、いろんな人達が自発的に意思をもって行動することで、大きなムーブメントになっていくんだと思います。

鈴木 主張があって活動があって割り振りして、というトップダウン型ではなくて、ボトムアップ型、ネットワーク型の活動なんだね。

ネット選挙が解禁された後の社会を考えよう

江口 中心があって、みんな「これやれ」って言うのでは、これまでの多くの活動と同じになってしまいます。そうではなく、「自分たちがこれができる」というような、それぞれが得意分野を生かしてやっていく、まさにボトムアップ的な活動で広まり呼びかけていく運動なんです。いろんな団体とか人とかに声をかけて、その人がその人なりに思う、活動をやってもらうことが大事だと考えています。

鈴木 なるほどね。そしたら、グリーンズでもグリーンズなりにできることがあるね。例えば海外のネット選挙の事例をみんなで集めて書いたり、「ネット選挙解禁についての対話の場を開こうよ」と呼びかけたり。

江口 ネット選挙運動はもちろん解禁することが目的なんですけど、解禁することは一つの手段なんです。ネット選挙が解禁されたら、みんながどういう社会にしたいのか、どういうふうに政治に関わっていきたいのか、を考える、言わば「扉を開く」ためのものでしかないと思うんです。ネットというメディアやコミュニケーションのインフラに対する意識を、政治の世界も含めた一般の人たちがもっと使ってもらい、そこから色々な意見や考えを発信したり、対話していくことが一番大事だと思います。

そのためには自分から、「ネット選挙運動がどういうものか?」と考える必要があるし、もっというと、今の社会についてどう思っているか、という考えを、もっと多くの人がもってもらいたい。世の中全体がそういう雰囲気にならないと、ネット選挙運動が解禁はしたけど結局何も変わらなかった、ということになりかねない。それじゃあ、意味がないんです。

鈴木 そこまで考えてるんですね! それはとても大事なことだと思う。だからグリーンズもすごく賛同するところでもあるし、何か一緒にやっていけたらなと思います。

グリーンズも世界中のソーシャルデザインの事例を紹介しているけど、成功するソーシャルデザインには、明確なパターンがあるなと思っているんですよ。その一つが、「ゴールを目的化しない」ということなんです。ゴールの先にある、人間の持っている可能性が開放させるというか、ドラクエで言う、レベルが上がるということを、ゴールの向こう側にちゃんと設定している活動は、力強く、ゴールに向かっていく。

原田 僕はサッカーが好きなんですが、サッカーもそうだと思ってます。高校サッカーでも、リーグ戦、ワールドカップでも、優勝するチームは間違いなくなんらかの哲学を持ってますよね。人間性を大事にしていたり、人間がレベルアップするような哲学があるチームしか、優勝は成し遂げられない。そうした、思いや哲学をもって行動してくれる人が一人でも増えてくれるといいなと思います。

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鈴木 今後の予定を教えて下さい。それから、このインタビューを読んで、何かしたいなと思った人に、まず一歩目としてできることは何でしょう?

原田 例えば、自分の選挙区の議員さんのホームページだけでも、見てほしいですね。案外、地元の議員のホームページを見る人ってほとんどいないと思います。しかも、見たら見たで、中身がほとんど更新されていないとか、おかしいなと思うこともあったりすることが多いかもしれません。かたや、名前も聞いたことがない議員さんが、こまめに更新してたりするので、そういうのを見るところからでも、いいんです。そうした簡単なことからはじめることで、少しづつ政治や社会に対して興味がでてくると思うんです。

鈴木 けっこう知らないよね。俺も地元いすみ市の議員、知らないです…。

江口 それが普通ですっていうこと自体が本来はおかしい、ということに気づくことから始まると思います。

鈴木 そうだよね。今、選挙とか議員の情報が一番まとまっているのってどこ?

原田 議員の情報が集まっているデータベースでいうと「ザ選挙」かな。

みんなで新しい民主主義の形を作って行きましょう!

鈴木 最後に、greenz.jp読者のみなさんに、メッセージがあったら、お願いします!

江口 ネットがこれだけ「あたりまえ」の時代に、選挙活動に使えないことはおかしいよね、と訴えかけたいです。「あたりまえのことを、あたりまえにできることは、あたりまえな話なのに、それがあたりまえじゃない」という、この一言だと思うんです。ぜひ、みんなも、もちろんネット選挙運動もそうですが、それ以外にも、自分自身が思っている問題に対して、声を上げ、色々な人たちを巻き込み、動きを起こしてほしいと思います!!

原田 声を上げて世の中を変えていくという体験を踏まえて、社会を少しづつ変えていくという活動って面白いと思います。政治を変える選挙の時に情報がでない、議論が出来ないそんな状況を変えていければいいとおもいます。みんなで新しい民主主義の形を作って行きましょう!!

鈴木、木村 ありがとうございました!

江口、原田 ありがとうございました!

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江口晋太朗(えぐち・しんたろう)
ヒト、コト、モノをつなぐ現代編集者。「ドットジェイピー」での議員インターンや新しい公共円卓会議の日本初のネット中継などの政治行政の活動から、スタートアップやIT系のメディアでのライター、ディレクター、greenz.jpライターやコミュニティデザインなど、これまでの既存の概念や枠を超えたつながりを作り出す活動をしている。1984年生まれ。福岡県出身。

原田謙介(はらだ・けんすけ)
東大在学時の2008年、「20代の投票率向上」を目指し学生団体「ivote」を結成。各党国会議員と学生との飲み会を行う「居酒屋ivote」、メールを活用した「ivoteメールプロジェクト」、全国18箇所で開催「20代の夏政り」等を行う。2011年6月ivote引退。2012年3月に大学卒業後、「政治と若者をつなぐ」をコンセプトにフリーで活動中。ブブゼラを購入するほどのサッカー好き。バルカン半島・東欧・南アジア等18ヶ国放浪。内閣府子ども・若者育成支援推進点検・評価会議委員。

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