市場でタダ同然の魚介も、じつは驚くほど旨い!青森から都心へ、新鮮で珍しい魚介を届ける「FTF」[マイプロSHOWCASE]

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青森県は、太平洋、津軽海峡、むつ湾、日本海と4つの海にひらかれ、魚の種類も量も豊富。けれど、大都市などの消費市場から離れているため、ロットが少ない魚などは価格が安定しなかったり、タダ同然で売られています。

単価が安ければ、漁師が大量に捕獲しようとするのも当然のこと。これが行き過ぎれば水産資源の減少につながります。これを何とかできたらと考えたのは、野呂英樹さん。本業のかたわら、魚の流通をサポートするNPOを漁師とともに立ち上げました。

漁師ももてあます市場価値の低い魚に価値を

農業に農協があるように、漁業にも漁業協同組合連合会と呼ばれる組織があります。漁師はこの組織に手数料をおさめる必要がありますが、個々に販売先の面倒を見てくれるわけではありません。

今や、漁師も自ら卸し先を見つけなければ生き残っていけない時代。
個人でネット販売に着手する人も増えていますが、本業の漁があるため、なかなか流通開拓や営業には手がまわらず、本格的に進められる人は少ないのだとか。

そんな漁師の話を聞いて野呂さんが考えたのは、都心の居酒屋や飲食店と漁師を直接つなげられたら、ということでした。

青森県各地の漁協青年部長数名と2011年8月にFTF(NPO法人 Fair Trade Fisher)を立ち上げます。

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野呂さんが販売に力を入れているのは、これまで市場で値のつかなかった魚介類です。

一般に出回る魚ばかりに、価値があるわけじゃないと思うんです。今はただ同然の価格で売られているようなものの中に宝がある。それは漁師よりも、自分のように客観的な立場に居るほうが見つけやすいのかもしれません。

どんな魚にどんな商品価値があるか?食べ方も含めて勉強していこうと思っています。

例えば、ホタテの稚貝のなかでも成長がよくなかったものは、漁師にとってはすでに収入にはならない用済みの品。1キロ数十円(1枚約1円!)ほどでたたき売られてしまいます。
ところがこのホタテの稚貝を酒蒸しにしたものがとっても美味しいのだとか!

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これまでの流通方法では埋もれてしまっていた魚貝を発掘して、正当な価格で買っていただくこと。それが、野呂さんたちの目指すところです。

東京に経営を本業とするパートナーが居て、販売先開拓のサポートをしてくれているのだとか。野呂さん自身も、ウィークデーは青森県庁で職員として働き、毎月1度自費で東京を訪れて営業活動を行います。湯島の居酒屋に魚をおさめるなど、実績も出てきました。

鮮度がいいから美味いとは限らない

野呂さんがターゲットにしているのは、やはり首都圏、東京です。
これまで、青森から東京まで運ぶのにかかる時間が、魚の鮮度を落とす、つまり市場価値をさげると考えられてきました。

魚は鮮度が命と言われますが、適切な一次処理を行うことで、輸送時間がかかっても、美味しさを保つことができます。魚が暴れて魚体に傷がつく前に、即殺して殺菌海水で血抜きをすることが大切。氷と直接触れるのもよくありません。このことを熟知して実践している漁師や業者は意外に多くありません。普通の魚屋では、発泡に氷を敷き詰め、魚を載せただけで発想するのが一般的。生臭い匂いの原因は、血と魚体表面についている雑菌が主な原因です。これを改善して、今まで値段のつかなかった魚や、流通に乗りにくかった魚を、大消費市場で産地と同じ美味しさで食べてもらえたら。そのための新しい流通を開拓したいと思っています。

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また、野呂さんは必ずしも魚の「鮮度がいい=美味しい」とは限らない事実に気付きます。

小学生の頃、夏休みのキャンプで、モリで突いた魚をその場で開き、刺身で食べたときも、魚は生ぬるく食感も悪く、まずかったことが印象に残っていました。

たとえばお刺身だったら、やっぱり1~2時間時間を置いた、しまった身の方が美味しいし、冷たくてきりっとした味わいだったり、見た目も大事でしょうし、新しければいいってものではない。

逆を言えば、漁師が持て余しているような魚でも、適切に処理して運べば、都会に住む人にとっては非常に魅力あるものになるはずです。

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漁師が意識を向けることも目的のひとつ

野呂さん自身は高校生の頃から釣りが好きで、現在は県庁で水産分野の研究に勤しんでいます。
特に漁師の家に生まれたわけでもなく、もともと漁師との付き合いが多かったわけではありません。

今お付き合いしているのは、漁師の中でも若い方たち。やっぱりお酒を呑みながらのコミュニケーションが多いですね。まぁ若いと言っても、漁師の世界なので、20代は居ません。30代が2人で、あとは40代以上。自分が一番年下です。皆さん青年部長クラスの人たちなので、発言権もあるし束ねている漁師さんたちが居るわけです。だから今のところ魚が足りなくて困ることはないです。

一番右が野呂英樹さん

一番右が野呂英樹さん

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もちろん、販売先を増やすことを目標にしていますが、野呂さんが重視するのは、幾ら儲かるか?よりも、漁師が販売や流通、魚の価値、漁獲量について意識する機会になればということ。

よくも悪くも、漁師さんたちは「高く売れるならいくらでもいいよ」ってノリのいい人たちが多い。売れるならどんどん獲ります。
水産資源は再生産できますが、親魚の乱獲は資源量の減少にもつながります。だからこそ、魚の単価を上げて、漁師の収入を増やすことが必要なのです。

目の前の漁師の抱える課題と、長期的な生態系の問題。
スパンの異なる二つの海の課題に向き合います。

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