漢方農法を広めたい!できること=デザインの力で農家をサポートする「Atelier Yukiyanagi」 [マイプロSHOWCASE]

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植物の生薬を組み合わせて利用する東洋の医薬品「漢方薬」。この漢方薬を活性剤(※栄養を吸収しやすくするなど、植物の力を助けるもの)や害虫回避剤として農業に利用する「漢方未来農法」というものがあります。自然界から誕生した漢方薬が、人に限らず、植物だって元気にしちゃうというわけです。

食べる人にもつくる人にも安心で安全!植物も丈夫に育つし、できる野菜はとってもおいしい!話を聞けば聞くほど、なんだかとっても画期的な農法です。

そんな漢方農法に魅力を感じ、その普及にデザインの視点から関わるようになった女性がいます。以前にもご紹介した植物デザインオフィス「Atelier Yukiyanagi」の代表、諏訪晴美さんです。

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諏訪晴美さん

漢方農法でつくられたお米を食べて感動!

普段は、商業施設の空間デザインやグリーンスタイリングなど、植物に関するさまざまなデザインを手がけている「Atelier Yukiyanagi」。

数年前、漢方緑化を行なっていた造園会社と知り合ったことから、漢方農法の存在を知りました。子どもを抱っこしながらでも撒くことができる、無害で安全な漢方農法をもっと多くの人に知ってもらいたいと、家庭向けのグリーンプロダクト「Kampo Garden」の商品開発・販売にも取り組んでいます。

漢方農法で作られた野菜は、オーガニックスーパーや百貨店などで販売されています。価格は一般に売られている野菜よりも高めですが、とにかくおいしいということで口コミが広がり、今年度の収穫分は問屋さんの予約だけで完売してしまった農家さんもいます。

漢方農法をやられているある農家さんの手はつるつるすべすべで、ちっとも農家さんの手に見えないんです。そのぐらい、植物にも人にも優しい農法なんですね。それに安全というだけではなく、野菜自体もとってもおいしいんです。

漢方農法で作られたお米を食べた時、私は初めて、お米を食べて感動してしまいました。思わず幸せな気もちになるぐらい、すごく優しい味がするんです。

デザイナーが農業に対してできること

諏訪さんは、植物は好きでしたが、農業に関してはそれほど詳しいわけではありませんでした。けれども、ぜひみんなに知ってもらいたいと思える農法に出会ったこと、漢方農法を実践する農家さんと接するうちに、農家の抱える問題点や悩みを知ったことで、農業にも関心が向くようになりました。

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漢方農法は家族単位でやっている小規模な農家さんが取り入れてる場合がほとんどです。そうすると量がつくれないので、安定して収入を得ることが難しい場合があります。

収穫量が多い年はいいんですが、たとえば天候が悪くて収穫量が落ちると、国に援助してもらわないと生活ができなかったりするんですね。だからみなさん、少しでも利益を上げるために、ある程度単価を上げて、直接問屋さんや店舗に卸しています。

そういう現状を知って、農家さんが自立できるよう、デザイナーとして少しでも助けられることがあるならやっていきたいと思いました。それまでなかった漢方農法の情報サイトを作ったり、コストを増やさずに箱や袋のデザインをかわいくつくり直したり、会った人にすぐ覚えてもらえるような名刺のデザインを考えたり。最近では、農家さんからのリクエストでロゴマークの作成もしています。

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諏訪さんは「自分にできること=デザイン」を通して、様々なサポートを行なっています。

たとえば写真の箱は、宅配に使えるように段ボールでできています。店舗にもそのまま置くことができ、取っ手がついているので、そのまま持ち歩くことも可能です。あまりにおしゃれすぎるデザインはやめ、漢方の優しいイメージを大切にした親しみやすいデザインを心がけました。この箱はお客さんはもちろんのこと、販売店にも大好評だそうです。

何種類か同じ商品が並んでいたとき、パッケージが気に入ったほうを購入することって、野菜に限らずありますよね。農業とデザインって一見なんの関係もなさそうに思えましたが、デザインが農業に対してできることは、意外とたくさんあるんだってことが、お話を聞いていてわかってきました。

「人と人をつなぐことも大切にしています!」

そのほか、雑誌に取り上げてもらえるよう働きかけたり、知り合いのレストランで漢方野菜を使ってもらうなど、農家さんとさまざまな人たちを繋げる取り組みも積極的に行なっています。「Atelier Yukiyanagi」のオフィスがある代々木上原ではマルシェの計画もしているそうです。

つい最近、代々木上原カフェというコミュニティカフェができました。代々木上原に関するさまざまな情報を発信しようとしているのですが、そこで月1回、代々木上原マルシェをやろうという計画があります。

マルシェを通じて野菜を販売することもできますし、土地柄、飲食店をやっている人やPRの仕事をしている人たちも多いので、マルシェでの出会いから広がりが生まれたらいいなと思っています。

また、東日本大震災をきっかけに、被災地の農業支援も考えるようになりました。たとえば、農業業界への参入を検討している企業から、研究費として農家にお金が回るように働きかけています。これによって企業は現場の声を拾うことができ、農家は、作付けが減ってしまった時ももらったお金でひとまず生活することができるようになります。

「本当にいいものはビジネスに発展する」

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驚くのは、これらのデザインワークやPR活動は、「Atelier Yukiyanagi」が無償で行なっているものだということ。

でも、デザイン料がないかわりに時々お野菜を送っていただいてます(笑)。本当においしくて、9ヶ月になる子どもがいるんですけど、普段買う野菜と食べっぷりが全然違うんですよ。

と諏訪さんは、スキルと野菜の物々交換を楽しんでいる様子。
でも、これだけの仕事をやるのはやっぱり大変なのでは?

好きでやっていることなので大変だと思ったことはないですね。それに、今は投資をしている段階なんだと考えています。本当に自分がいいと思ったものって、周りの人たちが共感してくれれば、自然とビジネスに発展するものなんじゃないでしょうか。逆にお金が生まれていかなかったら、ちゃんと広げられていないということだと思います。

それに私たちがやっている活動に興味をもっていただいた方が連絡をくださって、そこから仕事に繋がることがあるんですね。だから、この活動自体はまだ収益にはなっていませんが、会社の業績としては充分プラスになっているんです。

なんと、自分の思いを大切にして、目先の利益に囚われずに行動した結果、思いもかけなかったプラスの相乗効果が生まれているのです。

「漢方野菜のおいしさを伝えたい」

現在、漢方農法を取り入れている農家は北海道から九州まで全国にいますが、小さな家族経営の農家がほとんどで、まだまだ普及の余地は大いにありそうです。

今後は、漢方農法を始めた農家さんが販路を確保できるよう引き続きPRのお手伝いをしたり、新規で漢方農法に取り組みたいという人たちが増えるように、ウェブでの発信にも力を入れていきたいと考えています。

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漢方農法の情報サイト http://kamponoho.com/

農家さんは、おいしいと思ってくれる人に買ってもらうのがいちばん嬉しいんだそうです。だから、漢方農法のことをさらに広めて、漢方野菜のおいしさをもっと知ってもらえるようにしていきたいです。

漢方農法を広めたい、一生懸命に野菜づくりをしている農家さんの力になりたい、そんな諏訪さんの個人的な思いから始まった心づくしのサポート。そこにはお金には換えられない楽しさややりがい、人と人の心が行き交う温かさが詰まっています。

たくさんの人の愛情がこもった漢方野菜…いったいどんな味がするのでしょうか。漢方農法がスタンダードになり、漢方野菜が気軽に買えるようになる日が、なんだか待ち遠しく感じられます。

(text: 平川 友紀)

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