いつ、どこで、どんな形で大切な人を亡くしても、確実にサポートできる社会を目指す「Live on」[マイプロSHOWCASE]

Creative Commons: Some Rights Reserved. Photo by sridgway

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考えたくもないことかもしれませんが、一緒に想像してみましょう。もしあなたがいま大切な人を亡くしたら?

さみしさ、後悔、怒り、いろんな感情がこみ上げるかもしれません。そんな時、支えてくれる誰かがいたら…このサポートの仕組みづくりをしているのが一般社団法人「Live on(リヴオン)」です。大切な人を亡くした方へのグリーフサポート、ケア、学びの機会の提供などさまざまなプログラムを、事業として行っています。

母の日の原点を伝えていく意義

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「リヴオン」のプロジェクトのひとつが「母の日プロジェクト」。母の日に、母を亡くした人たちから手紙・手記を公募し、文集・書籍の出版を行っているのです。

母の日といえば「子どもたちから母親へ日頃の感謝を込めてプレゼントを贈る日」。その経済効果はなんと約2,000億円なのだとか。でも、母親を亡くした子どもにとっては、残念ながら自分には関係のない日、もしくは寂しい思いをしてしまう日となっているかもしれません。

しかし母の日の起源をさかのぼると、今から約100年前の5月に、お母さんを亡くしたアンナ・ジャービスさんという女の子が、亡き母への想いを伝えるために教会で白いカーネーションを配ったことがきっかけでした。

その原点のストーリーを知った「リヴオン」代表の尾角光美さんは、母の日の新しい可能性を見つけました。

亡くなっていたとしても、改めて想いを伝えることで、つながりを再生していくこともできるかもしれません。そしてお母さんが健在の人にとっては、今一緒に「生きている」ということを、それぞれ実感できる日とも言えます。

「母の日プロジェクト」では、プレゼントを贈れなくても想いを表現して届けることは出来ます。感謝の気持ちはもちろん、喜び、後悔、さみしさ、怒り…それぞれの心の中にある、お母さんに対して抱いているありのままの気持ちを伝えられるよう、みんなの声を文集にして届けているのです。

寺から変わる 社会が変わる

Creative Commons: Some rights reserved by cyesuta
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他にも「リヴオン」では「寺ルネッサンス」という取り組みを行なっています。

家族を亡くしてしまったとき、確実に関わるのはお坊さんです。しかし、いまいちお寺について身近に感じられなかったり、よくわからないという人が多いのではないでしょうか。

とはいえお寺はもともと、寺小屋による「学び」、落語による「笑い」、そして「癒し」の機能があり、地域の人々から頼りにされ、みんなから必要とされてきた場でした。その証拠に全国には約7万5000ものお寺があります。その数、なんとコンビニの約2倍!

これだけ存在するお寺が本来の機能を持ることができれば、誰もが大切な人を亡くしたときにサポートを受けられるという安心感を抱けるはず。そこに注目した「リヴオン」は、龍谷大学大学院の実践真宗学研究科の学生を中心とした”僧侶の卵たち”と一緒に、寺から変わる・社会が変わる「寺ルネッサンス」を進めているのです。

そこでは“僧侶の卵たち”がそれぞれ将来お寺を継承したとき、社会に必要な情報を提供できるようになることを目指しています。

一見普通の大学生である僧侶の卵たちと代表尾角さん。

一見普通の大学生である僧侶の卵たちと代表尾角さん。

”たまたま”の確率を上げる

さまざまな活動を通じてグリーフサポートを行う「リヴオン」を設立したきっかけは何だったのでしょうか?代表の尾角さんに伺いました。

尾角 光美さん
尾角光美さん

2003年3月、大学入学直前に母親を自殺で亡くしました。そのことが起点となっています。身体も壊し、心も限界に。自分で学費を稼ぎきれず大学を3回中退しそうになりました。そんな時、たくさんの人に助けてもらうことができ、無事に卒業することができたんです。

多くの遺児たちは自分の将来を諦めてしまいがちですが、私は“たまたま”人に恵まれていて助けられました。そんな自分に「何ができるだろう?」と考えたとき、“たまたま”ではなく、もっと確実にサポートにつながれるようにしようと思ったんです。

そして、ある経験が思いをより具体化します。

その後「あしなが育英会」で、病気、災害、自殺、テロ、エイズで親と死別した国内外の遺児のグリーフケアに携わりました。そこで多くの遺児と出会い、体験を分かち合いました。テロで父親の遺体も見つからないテロ遺児と何の罪もない民間人の父親を米軍兵に突然殺されたアフガニスタンの子ども。彼らは痛みも悲しみも抱いていました。そこに最後に生まれたのはでも大きな平和への祈りだったんです。

悲しみと悲しみが出会ったとき、力や希望が生まれることを実感し、感動しました。この原体験が「グリーフから希望を」を信念とした今の活動につながっています。

この経験により尾角さんはグリーフサポートの知識やスキルを身につけました。2006年の自殺対策基本法成立以後、自治体や学校、宗教者に呼ばれ自殺予防や自死遺族のケアに関する講演活動を始めます。以降、講演や教育を続けていくなかで、2007年から「母の日プロジェクト」を行っていきます。

グリーフサポートの事業化

グリーフサポートを事業として展開する転機となったのは、社会起業家向けビジネスプランコンペ「edge」に出場し優秀賞を受賞したことです。グリーフサポートの事業化について尾角さんはこう語ります。

これから日本は団塊の世代が高齢化するにつれて、亡くなる方が増えていきます。それと共にグリーフサポートのニーズも増えるでしょうが、サポートは全く足りていません。一方、アメリカではグリーフサポートが事業として成立しています。葬儀社の社員や宗教者たちはグリーフサポートのスキル知識を持っていて「本物」と認められたり、サポートを行う葬儀社が一流とされています。

アメリカの映画で当たり前に遺族が病院で渡される資料にグリーフサポートに関する情報を届けられていたんです。その様子を映画でみたとき衝撃を受けました。日本にもこのような当たり前にある仕組みを病院、葬儀社や寺などと連携して作る必要性はあると思います。

「つどいの場」を全国に!

最後に、尾角さんに今後の展望を伺いました。

将来的にはケアの現場をもっとつくっていきたいですね。思い描いているのは「親をなくした子のつどいの場」です。実際、いま私たちのオフィスはそのためにも借りています。集ったみんなが一息休んで、いのちを回復させていく場です。

さらにその現場では研修を受けた葬儀屋さんや僧侶、牧師、医師、看護師や心理士などが心のケアの担い手となって必要に応じて弁護士や司法書士、ソーシャルワーカーなどと連携した保護者へのサポート、学習支援の団体との連携でもっとトータルなサポートが受けられるようにしたいです。

一階がリヴオンのオフィスで、ロフト部分が自宅になっている「ohana」はつどいの場。

一階がリヴオンのオフィスで、ロフト部分が自宅になっている「ohana」はつどいの場。

全国でサポートを生み出す人たちのお産婆さんのような存在に

このようなケアの現場をつくるためにその担い手を「お寺でつくるグリーフサポート連続講座」の開催などを通して養成しています。

グリーフサポート連続講座の様子

石川県小松市で行った際には地域のグリーフサポート団体「グリーフシェアリング小松」と「ともいき」を受講生が立ち上げました。大切にしている価値観、精神、考え方、そして最低限のスキルを共有し、「全国あらゆる場所でこのような団体を立ち上げていくのを支援していきたい」と尾角さん。

あなたには大切な人を亡くしたときに頼れるところはありますか?普段あまり考える機会がないからこそ、不安になるだけでなく少しでもグリーフサポートについて調べてみてはいかがでしょう。

「リヴオン」のサイトをチェックしよう!

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