いよいよ”人工光合成”が実現!?「水+太陽光+粉=R水素」が、これからのエネルギーの方程式だ!(後編) [R水素(再生可能水素)アクションNOW]

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究極のエネルギーシフトを可能にする先端科学、光触媒のお話。前編はこちら、中編はこちら

前編中編で紹介して来たエネルギーシフトの切り札「光触媒技術」には、「人工光合成」という別称があります。

一体なぜでしょう?

植物の中には、天然の光触媒があります。光合成はまず、この光触媒が作用して光エネルギーが水を分解します。これが第一プロセス。次に、できた水素の化合物が原料となって二酸化炭素を糖に化けさせます。これが第二プロセスです。

光触媒の技術というのは、触媒によって光エネルギーが化学エネルギーに変換されるという部分において、光合成の第一プロセスにそっくりなんです。

植物が光合成をするのは、葉緑体の中に光触媒を持っているから!

植物が光合成をするのは、葉緑体の中に光触媒を持っているから!

植物による自然光合成では、第一プロセスでできた水素の化合物がコネクターとなって、第二プロセスで空気中のCO2を「糖」に変化させます。

対照的に、人工光合成では、第一プロセスにあたる光触媒による水の分解反応でできた水素が、エネルギーや肥料に変化します。

人間の肉体が、生命維持に必要なエネルギーを植物の光合成から得ているように、社会に必要なエネルギーを人工光合成で得る。もっとも身近な自然である人体と、その集合体である社会が、エネルギー利用の面で対照を成すシステム。これこそが、真にエコロジカル (=生態学的に健全な) エネルギーシステムと言えるのではないでしょうか。

エネルギーシフトの課題

さて、ここからは、高効率の光触媒物質の発見と、それによるエネルギーシフトに向けたハードルを見つけていきましょう。

実用化できる光触媒物質を見つけたいと考え動いているのは、工藤教授だけではありません。地球規模のエネルギー危機にあって、欧米では、太陽で水素をつくるための国家プロジェクトが次々に立ち上がっているそう。カリフォルニア工科大学が人工光合成の研究センターを設置しているほか、NSF(全米科学財団)下の研究機関には20の大学などが参加しています。

「早ければ10年、長くて30年で実用化したい」と語る工藤教授や世界の化学者を応援するには、どうすればいいのでしょうか。

一番の課題は研究の担い手が不足していること。特定の分野の研究だけではブレークスルーは難しい。光触媒としての性能が満たされると同時に、光を反応槽に集める工夫などシステム全体を同時多発的にブラッシュアップしていくための、企業も加わった領域横断的な体制を構築したい。

また、研究は、多種多様な物質を組み合わせ、ある割合で配合して焼き、活性を試すという作業の繰り返し。

これはシロウトである筆者の素朴な感想ですが、一度「これでは水素が発生しない」とわかった物質の組み合わせと配合率、つまり”失敗情報”を世界中で同じ研究をしている人同士がシェアすれば、同じ失敗を繰り返す時間のロスを省くことができるかもしれません。

幸いにも工藤教授と出会い、同じ道を歩むことを望んだ研究者の卵たちはすでに、日々研究室で実験装置と向き合っています。

若き研究者の卵たち。

若き研究者の卵たち。

文系の研究者にも、できることはたくさんあるでしょう。例えば、地域でエネルギーをまわすためのローカル・エネルギー・マネー・システムの発明が、研究を強力に後押しするかもしれません。

わたしたちにできること

そして、研究者ではない市井の人々にも、できることはたくさんあります。
まずは知ること。そして、一人でも多くの人に、今この日本で、ブレークスルーをめがけて一直線に進んでいる、「実現すれば本当に現実を変えられるアイデア」と、「現実を変えようとする研究者」の存在を知らせることもそのひとつです。

「消費者」であると同時に「労働者」であり、それ以前に「有権者=国の主権者」であり、そのもっと前には「地球の生態系の一員」である私たちひとりひとりには、未来を選ぶ自由と責任があります。

翼を持たない人間が、鉄の塊に乗って空を飛んだとき。
数百万人の命を救うペニシリンを見つけたとき。
何万キロも離れた場所にいる人の声が、小さな箱から聞こえたとき。
そして、約150年前に、それまで地面からわずかにしみ出しているものだった石油を、初めて人為的に採掘できたとき。

人類はこれまで、難問に直面するたびに、答えを探して古い当たり前と戦い、ブレークスルーを勝ち取りながら成長してきました。そんな人類の前に今、存亡の危機ともいえる複合的な問題が立ちはだかっています。

地球規模の、金融危機、不安定な経済、なくならない紛争・貧困・少女売春・ストリートチルドレン、放射能汚染、核兵器、人口爆発、自然共生型の伝統的な生活様式・文化の崩壊。

日本に目を向ければ、孤独死、過労死、幼児虐待、地域社会の疲弊、産業の空洞化、食料・衣料自給率の低迷、少子高齢化による医療年金負担の増大、引きこもり、うつ、若者や子どもの貧困、減らない二酸化炭素排出…。これらの大問題に、今年、原発事故による放射能汚染まで加わってしまいました。

視界を遮る霧はあまりにも濃く、問題の群れは、それ自体が生命体として成長しているかのように不気味で、巨大です。

その一方で、たったの一手でオセロの白と黒が劇的に入れ替わるように、形勢を覆す多くの希望が、確かな光を放っています。

地域にある太陽と水でエネルギーをまわす技術。それが当たり前になった社会は、富が偏在する構造が塗り替わり、化石エネルギー獲得の重圧や、経済成長と環境破壊のジレンマから解放された新しい姿をしているはずです。

このまま、有限で有害なエネルギーを甘んじて使い続けるのか、健全で新しい文明へ、今、舵を切るのか。未来を勝ち取る行動の選択権は、ひとりひとりの手にゆだねられています。