記憶を風化させないためのデザインとは?震災後の記録を刻み、未来へつなげる「311はじまり手帳」

greenz/グリーンズ 311はじまり手帳

特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

先日、greenz TOYで紹介した筧裕介さんの「issue+design」から生まれた「311はじまり手帳」、「いったいどんな手帳なんだろう?」と気になった方も多いのではないでしょうか?

どのように市民が参加してこの手帳が生まれたのか、そしてこの手帳を使うことで311をどうとらえることができるようになるのか、そのあたりを改めて筧さんに聞いてみました!

まず、この「311はじまり手帳」はその名のとおり東日本大震災発生からちょうど1年にあたる2012年3月11日から始まる手帳です。特長は3つ。

1. 過去に学ぶ「マンスリー・ダイアリー」
2. 記憶を留める「ウィークリー・ダイアリー」
3. 未来へ繋げる「次への備え7カ条」

実際に手にした印象はまず非常にシンプルなデザインで使いやすそうだということ。そして手帳を開くと、使い方の後に2011年3月11日の出来事が時間を追って書かれています。そしてそこからは1日ごとにその日の出来事(ニュース)が書かれた「ウィークリー・ダイアリー」がはじまります。

ウィークリー・ダイアリーの後ろには「マンスリー・ダイアリー」があります。こちらはその日に起きた過去の災害が書かれており、おおよその犠牲者数も記号で示されています。そして最後に連絡方法や必須アイテム、避難場所など備えておくべきことが細かく書かれています。

必須アイテムがそろっているかは常にチェック!

必須アイテムがそろっているかは常にチェック!

「次への備え7カ条」などは非常に便利ですし、マンスリーのページなどは「こんなにたくさんの災害があったのか」という発見もあります。しかしウィークリーの3月のページを手繰ると気が滅入るような記述が目につきます。

毎日予定を書き込んだり、確認したりするたびにこれが目に飛び込んでくるというのはどうなのか…とも思ってしまいましたが、そのあたりも含めて筧さんにお話をうかがってみました。

ー issue+designの市民参加型のソーシャルデザインによって生まれたということですが、具体的にはどのようなプロセスで誕生したのでしょうか?

もともとは、福岡地区での九州大学の学生が参加したワークショップで生まれたアイデアです。そのワークショップに参加していた九大の学生に加えて、東京造形大や慶応などの学生たちが色々と議論をして中身をつめまていきました。

最初は3月11日から始まる日めくりカレンダーのようなものだったのですが、議論を進める過程で手帳となり、さらに中身にはどんなコンテンツがあったらいいんだろう?という議論を重ねていくなかで、ウィークリーの手帳にふさわしいものとして、1年前の出来事が記載されているもの、マンスリーの手帳にふさわしいものとして、過去の日本の自然災害とその規模というアイデアにたどり着きました。

― どのような人に向けて作られたものなのでしょうか?

被災地以外、特に首都圏の方向けのアイデアだと思っています。電力供給に問題がないことがわかった秋以降、首都圏では急激に震災への関心や危機感がなくなってきました。それに対する問題意識から生まれたもので、首都圏の人が次の災害に備えるためのアイテムという位置づけです。

― 手にした印象としては、役に立つし発見もありますが、同時に毎日使うにはちょっと気が重いということも感じたのですが、そのような懸念はありませんでしたか?

その懸念はありました。ですので、1年前の出来事には前向きなものを積極的に選んでいます。たとえば「サッカー女子W杯『なでしこジャパン』優勝。横断幕で世界からの復興支援に感謝」などです。また、マンスリーの手帳でも過去の自然災害の規模を記号で表すことで死をあまり強く感じさせない工夫をしています。

7月17日、なでしこW杯優勝に日本中が湧いた

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― 確かに4月5月と進んでいくに連れて前向きなニュースが増えてますね。これなら使っていてもポジティブな方向に考えが行くような気がします。このプロジェクトでさらに被災地を支援する活動などは計画してますか?

販売価格の800円のうち300円を被災地復興のための義援金とさせていただく予定です。


復興を進めるために必要なのは何よりも私達が関心を持ち続けることです。今は震災のことを忘れるなんて考えられないと多くの方が思っているでしょう。でも、これからもう1年、そしてさらにもう1年、同じくらい強く被災地のことを思っていられるでしょうか?

「去年の自分の誕生日には何があったのだろう?」とふと思って見てみるとそこには「仙台塩釜港で『塩釜みなと祭』。昨年より2割増の2万3千人の人出」という記述が。それをみて、「今年もそのニュースを見ることが出来れば、復興がどれだけ進んだのかをまた実感できるのではないか」とも思いました。

このような具体的な手がかりがあれば私たちは過去への思いを抱き続けることができるのかもしれません。その具体化を1年にわたってしているということがこの「311はじまり手帳」の肝であり、アイデア/デザインの力なのではないでしょうか。

311はじまり手帳

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