「気がつけば、お向かいさんはアーティスト」!文豪にも愛された墨東エリアのアートプロジェクト「墨東まち見世」 [コミュニティデザインの現場から]

まち見世さんぽ風景。墨東エリアを血管のように走る路地。

まち見世さんぽ風景。墨東エリアを血管のように走る路地。

シリーズ「コミュニティデザインの現場から」では、「島編」「古都編」など地域に根付きながら未来をつくるキーパーソンの生の姿と、コミュニティを育むためのグッドアイデアをお届けしています。

greenz.jpをお読みの皆様、はじめまして、こんにちは。

墨東まち見世事務局のヨネザワエリカと申します。「コミュニティデザインの現場から」シリーズで、私が広報をしている墨東まち見世2011を紹介させていただけるということで、はりきって書かせていただきました。

昭和の風情が残る下町、墨東エリアで「墨東まち見世2011」は3年目を迎えました。「墨東」とは隅田川と荒川、スカイツリーのすぐ横を流れる北十間川によって囲まれた地域で、押上駅、曳舟駅、京成曳舟駅、八広駅、鐘ヶ淵駅、小村井駅を含みます。


墨東エリアとアートプロジェクト

ネットワークプロジェクト企画紹介 左:墨東文庫 右:とくべつなあくび

ネットワークプロジェクト企画紹介 左:墨東文庫 右:とくべつなあくび

迷路のように入り組んだ路地を歩くと今と昔が融け合う、独特の、新しい下町の景色を感じることができます。玄関先にある園芸、リノベーションを経て幾人もの生活を包み込んだ古民家、まちの人があつまる喫茶店のカウンターで広がる話、すれ違う人との挨拶、スカイツリー、たくさんの猫、お寺、教会、公園、路地を走る子ども姿と大きな声。

路地園芸を作っているのは、地元の人です。

路地園芸を作っているのは、地元の人です。

このエリアは古くから芸術や文化が生きていました。永井荷風や幸田露伴など文豪を魅了したまちは、多くのアーティストを惹きつけます。今でこそ日本各地で地域アートプロジェクトが盛んに行われていますが、このエリアでは10年も前から実施されていました。


3年目の墨東まち見世に起こった事

「墨東まち見世」は2009年にスタート。初年度は墨東エリア内外で活動する17組のアーティストに、滞在制作や作品展示をしていただきました。2年目はアーティスト/ギャラリーやアトリエなどアート拠点/各種団体の企画をつなぐ「ネットワーク・プロジェクト」がメインとなり、それぞれが「私たちが実現したい企画はこうだ!」と主体的な動きを見せました。

3年目を迎えた墨東まち見世2011では、この動きを活かすべく「ネットワーク・プロジェクト」の企画募集を行う際、審査を廃し、企画書による応募+企画検討会でのプレゼンテーションを参加資格としました。つまり手を挙げた人が必ず企画を実施できるプロジェクトとして運営したのです。すると、何が起こったのか。アーティストとしての活動歴のない、地元の人(OLやサラリーマンや学生)が手を挙げたのです。

墨東まち見世2011企画検討会の風景。審査はありません。

墨東まち見世2011企画検討会の風景。審査はありません。


「気がつけば、お向かいさんはアーティスト」

※墨東まち見世2011キャッチコピー過去2年のプロジェクトでは、学生ボランティアだけでなく地元の人も「墨東まち見世」をサポートしてくださいました。アーティストが作品をつくる過程を間近で感じた彼らは、「自分たちも何かできるかもしれない」という気持ちが強くなったのでしょう。3年目の今年、サポーターとしてではなく、企画者として参加しました。

考えてみれば、墨東エリアの事を最もよく知っているのは地元の人です。家を構え、暮らし、地元の人と関わり、外の人と関わる。変化を肌で感じ、自分の事として捉え、子どもが生まれたら成長のイメージをこの地域で描く。墨東エリアの課題と、アートの可能性を最も強く感じていたのは、地元の人なのです。

今年の「ネットワークプロジェクト」は20企画。もちろん、墨東エリア内外で活動するアーティストや拠点、団体からの応募もありましたが、特に、地元の人の企画は話題を集めました。


身の丈の活動がかたちになる

彼らは、地元の人ならではの作品を見せてくれました。

〈わたしの小さな生活〉風景

〈わたしの小さな生活〉風景

自分の住む家をひらき、古民家で暮らすことの実感を、その場所が包みこんできた人とその物語を通じて感じさせる作品<わたしの小さな生活>

慣れ親しんだおばあちゃんの家としての古民家に刻み込まれた記憶を、食のアートプロジェクトを通じて感じさせる作品<きおくレストラン><リノベカフェ>

まちの人に働きかけ、実現の可能不可能を気にせず、躊躇せずに「墨東でやりたいこと」のアイデア出しをしてもらう作品<ちらっとでも「ボクトウでやりたい!」と思ったことをみんなが出し切ることで、なにが起こるのか?>

〈ちらっと〜〉風景。まちの人が集まってやりたい事を議論しています。

〈ちらっと〜〉風景。まちの人が集まってやりたい事を議論しています。

全てが身の丈の、生活の範囲の中にある作品です。大規模な作品や、有名なアーティストの作品を見慣れた人は見逃してしまうかもしれません。しかし、地域アートプロジェクトは、本当は、こうした地元の人の活動をかたちにできることこそが魅力なのです。


今後の墨東まち見世

2011年10月21日(金)から11月23日(祝)までをメイン期間とし、墨東まち見世2011では20個の企画、10種類のまち歩きツアー、2回のトークショーを実施してきました。これだけ魅力をお伝えしておきながら大変恐縮なのですが、ほとんどの企画が終了してしまいました。(※私としても、ぜひ皆様に体験していただきたかった企画ばかりで、ご紹介が遅れてしまったことが悔やまれてなりません。)

墨東まち見世は2012年も開催予定です。そして、2011年の墨東まち見世は終わったわけではありません。墨東エリア初体験のアーティストに作品制作を依頼する「100日プロジェクト」が進行中です。今年は谷山恭子さんを招聘いたしました。

今回は新しい試みとして、制作過程をひらきます。さんぽを通じてのまちなかリサーチ、地元の人とのコミュニケーション過程をブログや会議を通じて公開します。目的は、もちろん、アートがまちに対してできることを地元の人に伝えるため。機会をいただけましたら、この100日プロジェクトについてもご紹介させてください。


それでは、引き続き「墨東まち見世」をよろしくお願いいたします。

(Text: ヨネザワエリカ

NPO法人向島学会×東京アートポイント計画「墨東まち見世2011」

主に曳舟・京島・東向島・八広・押上エリア
メイン会期:平成23年10月21日[金]−11月23日[水・祝]の主に金・土・日・祝

【「墨東まち見世」とは】
墨東エリアに息づく多様な文化の視点を通し、これからのまちと暮らしを多方面から探っていくことを目的に平成21年度より継続的に展開されているアートプロジェクトです。東京の様々な人・まち・活動をアートで結ぶことで、東京の多様な魅力を地域・市民の参画により創造・発信することを目指す「東京アートポイント計画」の一環として実施されています。
主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、特定非営利活動法人向島学会
後援:墨田区、一般社団法人墨田区観光協会、財団法人墨田まちづくり公社
詳しくはコチラ

その他、墨東まち見世2011の情報/写真はこちらから!
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