「心なき経済から心ある経済へシフトしていきましょう」映画『第4の革命』を配給する関根健次さん(後編)

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このインタビューシリーズは、「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア」を実現して、ステキな未来をつくりだしている方々へのインタビューをお届けします。

こんにちは、greenz.jp発行人鈴木菜央です。

今回も、映画『第4の革命』を配給している、ユナイテッドピープルの関根健次さんに2回(前編、後編)に分けて、お話を伺います。


『第4の革命』ムーブメント、どうつくっていく?

鈴木 さて、インタビュー前編では、ドキュメンタリー『第4の革命』がどんな映画か?ということや、日本全国に自主上映会を行うという、とてもユニークなムーブメントになる、という話を聞いてきました。

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全国の自主上映会会場のマップ(2012年1月現在)

鈴木 後編の今回は、全国500か所での開催を目指している自主上映会から始まって、今後のムーブメントをどうつくっていくのか、というところからお話を聞かせてください。

関根健次(以下関根) そうなんです。映画っていうのは、疑似体験ができる強いメディアだと申し上げましたが、映画といっても、ただ上映するだけでは、1年も経つと「あんな映画もあったよな」ということにもなりかねない。この『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』(以下『第4の革命』)という映画を生かして、社会に定着させていくには、映画を飛び越えて、運動を起こしていきたいんです。

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『第4の革命』フライヤー

一つは、『第4の革命』をご覧になったみなさんと、ソーラー発電所をつくりたい。第4の革命にちなんで『第4発電所』。映画を観た全国の方々から例えば一口1万円ずつ集めて、それを原資に、東北の被災地エリアにソーラーパネルを寄付していく、という活動をやりたいですね。

もうひとつは、自分たちの屋根にソーラー発電パネルをつけられる人は、どんどんパネルを付けていこうという訴えていきたいですね。全国で『第4の革命』をきっかけにソーラー発電パネルをつけた人の報告を取りまとめていって、バーチャルにですが、『第4発電所』として、たとえば500件で現在2000kW発電しています、とウェブサイトでビジュアルで見せていきたい。これこそがエネルギー・デモクラシーだと思うんです。

賃貸やマンションなどでソーラー発電パネルが設置できない人も多いと思うが、その場合は寄付という選択や、もしかしたら投資という選択もあるかもしれない。再生可能エネルギーを選択する人の出口をいろんなカタチで作っていきたいと思っています。


『第4の革命』予告編

鈴木 私も映画を見ましたが、ものすごく気持ちが盛り上がりました。「みんなでやればできそう!」って。映画を観たあとに「何かしたい」と思う人は多いと思いますね。そんな関根さんですが、夢ってなんですか? 長期的なビジョンを教えてください。


関根健次の夢、長期ビジョンは?

関根 長期的には、日本は原子力発電所を持っているのはありえない。もんじゅなどの高速増殖炉や核のリサイクル施設を持つのも、ありえない。津波や地震の影響を受けない安全性の高い原子炉を作っていこうという動きもありますが、ゴミとして大量に排出される放射性廃棄物というのは10万年以上管理していかなくてはいけない。そういったことに、誰が責任を持てるのか? 誰も持てないですよね。核エネルギーを扱うということは、今の世代に対しても、未来の世代に対しても、重大なリスクだと思う。長期的なビジョンに立てば、「今」、再生可能エネルギーへシフトをかならずやらなければいけないことです。「再生可能エネルギーは、不安定だし、価格が高い」ということを言う人がいますが、この映画に出てくる世界最大のソーラーパネルメーカーであるサンテックパワーの創業者はこう断言しています。

今後3年から4年で、太陽光発電が生み出すエネルギー価格は、従来型のエネルギーよりも安くなるだろう

関根 つまり、それだけ、世界中で太陽光、風力発電への投資額がどんどん伸びていて、市場もどんどんと伸びている。具体的には、2000年には再生可能エネルギーの投資額が1兆円未満だったのが、2010年には20兆円以上に伸びている。10年で20倍になっているということなんです。今後はさらに競争も激しくなるし、価格が下がっていくことが見えている。

もうひとつは、今地球に降り注ぐエネルギーは、今地球全体で我々人類が使っているエネルギーの1万倍以上だと言われています。今後、さらなる技術革新によって、太陽光エネルギーだけでも、地球社会を十分に持続可能に経済を維持できていくはずなんです。今我々が出すべき答えは、もう出ている。選択肢はすぐそこに存在していて、それを選択するだけでいい。そんなところまで、再生可能エネルギーの市場は広がっているし、技術革新が進んでいる。今後はさらに多くの金額を技術開発に振り向ければいい。結果的に、コストの高い原油や、原子力由来のエネルギーから、再生可能エネルギーへのエネルギーシフトができていく。それが私のビジョンです。

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鈴木 そのビジョンは、greenz.jpも共有するところです。 ところで、もともとクリック募金の「イーココロ!」をやっていたユナイテッドピープルが映画配給に乗り出したのは、なぜなんでしょうか?


ユナイテッドピープルが、映画配給を始めた理由は?

関根 「イーココロ!」はクリック募金のシステム、「署名TV」は誰でもオンラインで署名活動ができるというプラットフォームですよね。これらのプラットフォームは、誰かが寄付したい、署名したいと思わなければ動かない。これらを運営してきて、気づいた課題は、そもそも、社会的な課題に気づいて、社会を変えていこうと考える人がまだまだ少数派なんだなということ。では、そういう人を増やすにはどうしたらいいのか?と考えた結果、たどり着いた一つの答えが、映画なんです。映画は、疑似体験ができる。自分が体験したことがないことについて、リアリティを持って体験できたように感じられる。それによって、心が動く。人って、喜んだり、悲しんだり、怒ったり。心が動くと行動する。動いた心が原動力になって、「社会を変えていきたい、こういった社会にしていきたい」と思うのではないか? それが、結果的に、社会変革につながっていくんじゃないかと。それで2009年から映画配給を始めた。

鈴木 これまで活動していた分野とは、まったく違いますよね。大変だったんじゃないですか?

関根 2009年に初めて配給した映画がバングラデシュのストリートチルドレンを題材にした『アリ地獄のような街』だったのですが、まったく業界のことを知らないで始めたので、苦労しましたね。たとえば、映画館で上映するのには、35mmフィルムだったりとか、DVカムというテープが必要なんですが、はじめ、DVD一枚を持って行ったら上映してくれると思っていた。もちろん35mmフィルムもDVカムも実物を見たことがない。最初の映画はDVDしか持っていなかったので、映画館に「どうやったらDVカム変換できるんですか?」って聞いて。それから映画館に「関根さん、チラシとポスターつくってくださいね」と言われたけど業界で一般的な大きさもわからない。印刷所もわからない。つくって行ったら「これじゃ小さいよ!」と言われたり。

「試写会をやりなさい」と言われて、いろんな人に聞いて試写会場を教えてもらって、試写会場のスタッフさんに 「どうやって劇場公開すればいいんですかね?」とか「条件面ってどうやって交渉したらいいんですかね?」とか、とにかく出会った映画関係者一人ひとりにすべて聞いて回った。そのかわり、常識破りな感じでやったから、普通の映画配給では必ずマスコミ向け試写をやるんだけど、そんなこともほとんどやらなかった。そのかわりに、ちょっと違ったスタイルでイベントをやることが多いですね。2011年5月に配給した『幸せの経済学』では、経済の専門家を呼んでトークディスカッションを企画してみたり。とくに変わっているのは、自主上映会を中心にした配給という点でしょうね。

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鈴木 言わばユーザー参加型の配給ですよね。このインタビューを読んでくれた読者には、どんな参加の仕方がありますか?


『第4の革命』ムーブメントは、どんなことで参加できる?

関根 とにかく、近くで自主上映会が行われていたら、ぜひ足を運んでほしい。『第4の革命』のFacebookページ、Twitterアカウントもあるので、最新情報を得たり、第4発電所のアイデアを募集していますので、アイデアを出したりして参加して欲しいですね!

そして、誰でも自主上映会ができますので、ぜひ開催を考えてみてほしい。ちなみに開催にかかる費用は、1日100人までのイベントの場合で7万3500円。1日何回でも上映できます。DVDでの上映になりますので、パソコンもしくはDVDプレイヤーとプロジェクター、スクリーンさえ用意すれば、上映会ができます。多くの会場では、イベントやワークショップと組み合わせて、参加費1500円程度でやっていますね。

鈴木 原発国民投票や、各地の原発運転差し止め訴訟、祝島の活動なども広く賛同を集めるようになってきていますから、『第4の革命』も広がってほしいですね。

関根 みなさん、ぜひよろしくお願いします!


「心なき経済」から「心ある経済」へのシフト

関根 そして最後に『第4の革命』から離れて話したいことがあります。

今、私達が生きている社会というのは、グローバリゼーションの結果、経済がグローバル経済になってほぼ一体化した結果、非常に大きな問題が生じてきていると思うんです。経済がすべてに優先するという「心なき経済」により、地球がずたずたになり、永遠に取り戻せない豊かないのち、つまり生物多様性が損なわれた。そして「心なき技術」である原子力発電で、ついに今回の事故に至ってしまった。今、地球社会は大きな転換期を迎えていると思います。20世紀のもうけ至上主義から、心ある、地球と共生するような経済システムに移行していかなくてはいけない。実はその答えは見えてきている。そのひとつの軸はローカリゼーションだと思っています。グローバリゼーションに対してのローカリゼーション(地域化)。

グローバリゼーションでは、経済的利益の最大化を目指して安く、大量にエネルギーをつくり、人、金、モノを動かしていく。そのほうが儲かりますから。しかし、そこでは、人の幸せというものはないがしろにされてきた。ローカリゼーションでは、それを小さくしていく。地域化していく。地域でお金も人もエネルギーも回していく。その結果、「心なき経済」から、「心ある経済」へシフトしていく。これが実は、人と人の関係を豊かにして、人と自然との関係を豊かにしていくことにつながる。地域化していくことで、自分のやった行為の結果が目に見えるようになる。人々がより倫理的に行動していくとも言われている。例えば、どこか知らない誰かではなく、自分や家族の健康に直結しているということが目に見えれば、地球にも人にも配慮した製品やサービスにお金を払う人は増えますよね?

このようにローカリゼーションというのは、人間らしい社会を回復するための動きですが、その中でとても重要なのが、エネルギーのローカリゼーションだと思っています。

たとえば日本にある原子力発電。過疎地に巨大な発電所を作って、巨大な送電網で遠くに運んでいくというのは、20世紀型のエネルギー生産と消費のスタイル。それを、地域で作って、地域で消費していくカタチに変えていき、エネルギーを自立させていく。その結果、エネルギーのロスも少なくなる。地域の人がオーナーになって、利益が地域の人々に帰っていく。だから、彼らは地域を汚染するような選択はせず、再生可能エネルギーを選ぶ。それが、人間とあらゆる生き物とも生きていくということ。私たちがこの地球上で持続可能に暮らしていくには、ローカリゼーションというのはすごく大切なキーワードなんですね。つまり、映画『第4の革命』は「心なき経済」から「心ある経済」へのシフトしようよ、ということなんです。

ユナイテッドピープルとしては、『幸せの経済学』でローカリゼーションという言葉に出会いました。この『第4の革命』でエネルギーのローカリゼーションについて、みなさんと考えていきたい。そして今後も、人が幸せに暮らしていける「心ある経済」への提案になる作品を配給していきたいですね。


関根健次の「座右の問い」は…

鈴木 最後に、関根さんの「座右の問い」は何ですか?

関根 あえて問うなら「今日死んだら幸せ?」ですかね。将来の心配をし過ぎたり、不安だからといって先延ばしにするなど「今」に向き合わずに生きてはだめだ。常に今日が最後の日だと思って生きることが最良の結果を生み出すと考えています。

鈴木 ありがとうございました!

関根 健次(せきね・けんじ)
1976年生まれ 神奈川県藤沢市出身、ベロイト大学経済学部卒業(アメリカ)。ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役。高校卒業後、アメリカの大学へ進学。卒業後、帰国し、主にIT業界に身を置く。2002年に起業。大学の卒業旅行で偶然紛争地訪問したことがきっかけで、世界の問題解決を目指す事業を開始。2003年5月にNGO/NPO支援のための募金サイト、イーココロ!を立ち上げる。著書に「ユナイテッドピープル」2008年3月にネットで署名活動ができる署名TVをリリース。2009年11月より映画配給事業を開始。2010年3月にはチェンジメーカー育成、旅の大学BADO!をリリース。2011年9月21日よりUFPFF 国際平和映像祭を開催。NGO エクマットラ日本窓口担当。2011年4月、エクマットラと共にストリートチルドレン支援目的のレストラン「ロシャヨン」をバングラデシュ、ダッカにオープン。

『第4の革命』公式ウェブサイト

『第4の革命』全国一斉自主上映会一覧

『第4の革命』全国上映映画館一覧