ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

5 years ago - 2011.09.22

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カンヌ国際クリエイティブ祭2011受賞の社会派広告(12)Titanium & Film Craft Lions

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今年のカンヌ受賞作の紹介、いよいよこれで最後になります。今回は他のカテゴリーには収まらない先進的な広告事例を評価するチタニウム部門と、技術的に優れた映像を評価するフィルムクラフト部門の受賞作をご紹介します。

まずはチタニウムから。

【GRAND PRIX】

●THE SPEED CAMERA LOTTERY / Volkswagen

これは、greenzの記事にもなっていますが、昨年も多くの部門で評価されたフォルクスワーゲンの「FUN THEORY」で賞を取ったアイデアに基づいて実施された取り組みです。

楽しければ、人は行動を変える。そして世の中が変わっていくというFUN THEORYは、スピード違反も楽しく減らしちゃうんです。スピード違反した人が払う違反金が、制限速度内で走っている人の宝くじの賞金になるというこの取り組み。ストックホルムで3日間にわたって行われた結果、なんとスピード違反が21.6%も減ったそうです。そしてもちろん、社会に貢献する会社というイメージを高めることに成功したフォルクスワーゲンは、エコカー市場でのシェアをさらに伸ばしました。

【BRONZE】

●THE RIPPLE EFFECT / Transport Accident Commission’s

ブロンズを受賞したこのキャンペーンも、目的はスピード違反の撲滅です。ただし、こちらのアプローチは辛口です。車の飛ばし過ぎで実際に命を落とした一人の青年、ルーク・ロビンソンが主人公です。キャンペーンは、ルークの家族からのコメントを載せた紙媒体での広告から始まりました。

それから2週間にわたって、ルークのまわりにいた人たちが語る映像が流れました。家族はもちろん、友だちや仕事仲間、そして救急隊員や葬儀屋まで、16人もの人がルークについて率直に語る映像です。

メッセージは「スピードを出すことは、すべての人を傷つける」。いまもアップされているキャンペーンサイトではすべての映像が見られるようになっており、フェイスブックのアカウントを入力すると、自分が酷い死に方をすることで悲しむであろう人びとが表示されるようになっています。メッセージを自分ごと化するために、ソーシャルメディアが使われているんですね。

続いて、フィルムクラフトからです。

【BRONZE】

●TESTIMONY OF A SNAIL / SEQUOIA

カタツムリがまるで人間のように話をする不思議な映像。下のメイキングを見ると、コマ撮り+3DCGという、実に手が込んだものだということがわかります。すごく自然な映像をつくるために最新のテクノロジーを駆使しまくってるんですね。

SEQUOIA – TESTIMONY OF A SNAIL – MAKING OF from UNIT IMAGE on Vimeo.

このCM、映像もユニークですが、カタツムリが話す内容といいメッセージといい、すごく変わってるんです。カタツムリは雌雄同体の生き物です。オスにもメスにもなれます。で、このカタツムリは悩み、語ります。「自分が女性も男性もどちらも好きだということに気づいたんだ。私は何なんだろう。

体が男で、心が女?いや、その逆なのか?」と。そして最後のコピーはこう来ます。「自然は隠し事をしません」。そして続きます。「SEQUOIAはオーガニック・自然食品のお店です。約8,000種類の品を取りそろえています」と。自分の性の悩みをカミングアウトするカタツムリを見せることで、「自然というやつは正直なんですよ」と、自然食品の安全性を伝えているんですね。いやあ、深いというか、面白すぎます、フランス。

さて、12回にわたってお伝えしてきたカンヌの社会派広告、いかがでしたか。解決しないといけない社会的な問題は山ほどありますが、それを乗り越えようとするアイデアは無限です。それぞれの国ならではの表現、いまの時代ならではの表現。クリエイティブは、世界を変える勇気を与えてくれます。

※これまでに紹介した以下の部門からの受賞作と重複するものは省いてあります。

writer ライターリスト

丸原 孝紀

丸原 孝紀

greenz シニアライター 1976年京都生まれ。コピーライター(東京コピーライターズクラブ会員)。企業に社会貢献型のコミュニケーションを提案するとともに、NGO/NPOのクリエイティブを積極的にサポートしている。社会課題を解決するアイデアを提案するプランング・ユニット「POZI」のプランナーとしても活動中。

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