ISSUE まちづくり

4 years ago - 2011.08.24

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“コトづくり”で街を変える。寿町の再生から社会を見つめる「コトラボ」 [トム・ソーヤーのペンキ塗り]

endai

この記事はフリーペーパー「metro min.(メトロミニッツ)」と井上英之さん、greenz.jpのコラボレーション企画『トム・ソーヤーのペンキ塗り』にて、メトロミニッツ誌面(8月20日発行)にも掲載中のものです。

コトラボ」は、横浜・寿町のマチづくりを手掛ける会社です。でも、そのやり方は他とは少し違います。彼らが行っているのは、“コトづくり”。食やアートといったモノづくりではなく、“コト”によって街や人を変えて行く取り組みです。

日雇い労働者の街、俗に言う“ドヤ街”。寿町は、「日本三大ドヤ街」としても、その名を知られている街です。今、その状況は変貌を見せており、生活保護受給者の増加や空き部屋の増加、高齢化といった現実に直面していることをご存知でしょうか。

そんな寿町の街の道路脇にある“宿”という看板。クリエイティブな雰囲気を持ちながら、どことなく街に馴染んでいるようにも見えるここが、「YOKOHAMA HOSTEL VILLAGE」(以下、YHV)のフロントオフィス。コトラボのマチづくりの拠点です。

YOKOHAMA HOSTEL VILLAGE

YOKOHAMA HOSTEL VILLAGE

YHVは、簡易宿泊所の空き部屋を利用して、ツーリストが格安で宿泊できるようにリノベーションした宿泊施設。2005年のオープン以来、駅から徒歩5分という利便性と格安の料金が話題となり、国内外から若いツーリストが訪れるようになりました。今では、受付横のオープンスペースで日替わりカフェや英会話教室も始まり、ますます活気を帯びてきています。

コトラボのマチづくりプロジェクトは、これだけに留まりません。2006年の横浜市長選の際には、投票率向上のための「KOTOBUKI選挙へ行こうキャンペーン」を展開。カラフルな矢印の看板を街中に貼り付け、投票所までの道案内としたところ、寿地区の投票率は4%の上昇(前回の市長選比。横浜市全体では3%の下落)を記録しました。

「KOTOBUKI選挙へ行こうキャンペーン」のポスター

「KOTOBUKI選挙へ行こうキャンペーン」のポスター

決して美しいとは言えない寿町の環境を良くするために企画した「一坪縁台」プロジェクトでは、オセロや将棋の台に見立てた遊び心のある一坪サイズの縁台を街に設置。制作過程では街の人も自ら参加し、できあがった縁台の周りに街の人が集うようになりました。

「一坪縁台」プロジェクト

「一坪縁台」プロジェクト

どのプロジェクトにおいても共通しているのは、それが人々の行動を変えていること。YHVによって若者がこの街に足を踏み入れるようになり、街の人との交流も生まれました。自分に選挙権があることさえ知らなかった人々が投票所に足を運び、それまでこの街を無視していた選挙カーも訪れるようになりました。路上に座っていた人々が、面白がって縁台の制作に加わり、ボランティアの学生との共同作業を行いました。変わったのは、街そのものではなく、人々の価値観であり行動です。

のプロジェクトも、街の人が自ら楽しんで参加するように…

どのプロジェクトも、街の人が自ら楽しんで参加するように…

コトラボ代表の岡部友彦さんは、街を“生き物”と見立てて、こう語ります。

ぼくらがやっているのは、人々が「あ、そうだったんだ」と気付き、街の見方を変えるようなものを可視化するプロセスのデザイン。寿町の6,000票が可視化されることによって政治家にとっての価値となるように、視覚化することによって物事は初めて価値となり、その価値のシフトが人の流れを変えます。寿町は、現在高齢化が問題となっている。価値の可視化により、街の生態系を多様に変えていきたい。

最近では、YHV以外にも旅行者を対象としたホステルが4〜5軒に増えたり、アーティストや建築家が寿町に拠点を構え始めました。人々が思わず参加したくなるようなコトラボの仕掛けが、相乗効果となって人々の行動に変化を生んでいます。そして岡部さんの目は、今度は街の外に向き始めています。昨年、寿町から川を挟んだ向こう側のエリアに慶応大学とのコラボレーションで、地域交流レンタルスペース「かどべや」を構えました。

今までは中に向けて人の流れを作ってきましたが、昨年からは外にパスを作ることを始めていて、「かどべや」はそのひとつです。寿町に、風の入口と出口をつくり、風通しの良い街にしていきたい。この街の問題は日本全体の問題の先行事例でもあり、ここから見えてくるものは、いつか日本の他の地域、さらに世界各地でも応用できるものだと思っています。価値観を変え、行動を変え、日本を元気にしていくようなことをやっていきたいです。

2004年、他の地域で緑化プロジェクトを友人と構想していた時に寿町のNPO法人「さなぎ達」と出会い、導かれるようにこの街にやってきた岡部さん。彼がこの場所に呼ばれたのは偶然ではなく必然だったのかもしれません。まさに“現代のトム・ソーヤ”と呼びたくなる岡部さんの冒険は、まだまだ続いて行きそうです。

「コトラボ」代表・岡部友彦さん

「コトラボ」代表・岡部友彦さん

いのさんのここがポイント!

むつかしいことも、楽しそうに。
横浜寿町の人間行動を“デザイン”する。

みなさん、横浜の中華街のとなり、「寿町」って行ったことがありますか?きっと、びっくりしますよ。華やかな中華街から間もない場所にある、日本三大「ドヤ街」のひとつです。ドヤ街って、もともとは「あしたのジョー」とかに出てくる労働者たちのまちです。「ジョー」では、貧しくとも元気で自由でしたが、今、ドヤ街も急速に高齢化し、新たな問題と局面を迎えています。

岡部さんがしているのは、”Make it Happen”
つまり、そこで何かをうごかしてみる。目の前に、“目に見える”出来事が生まれると、人はそれに反応して新しいことを始めて行く。投票にいこうよ、いくべきだよ!とおっちゃんたちを説得するよりも、投票所までのカラフルな矢印をまちじゅうにいっぱい貼ってみよう。まちのなかに、縁台をつくってみよう。そこで将棋をはじめたら、おっちゃんたちは、がまんできず口を出してきて、そこから新しい関係性がはじまるよ。

こういうのを、ぼくは「人間行動のデザイン」と呼んでいます。世界中の多くの社会の変革をおこしているフロンティアで、よく見られる手法です。楽しい!と思う気持ちをデザインする。そこから人は、しかける側が想像もしていなかったことを、新たな担い手として始めて行く。信頼とわくわくは、伝染します。

ぼくの知っているサンフランシスコのあるNPOでは、カベを明るいオレンジ色に塗っています。たいしてお金もかかりません。貧困地域の高校生たちに、「きみたちはできるんだよ!」と理屈ではなくその空間のデザインでそれを伝えています。創造性って、デザイナーだけの仕事じゃないとおもうんですね。その舞台で、若者たちはみずから創意工夫を重ね尊厳をとりかえし、驚くような成長や変化をみせています。

ドヤ街にないものばかりをみるのではなく、そこにあるものから、何かを一緒につくってみよう。コトをおこしてみよう。まずは、いつもの職場の机の配置をかえてみるとか、ミーティングの机の真ん中にバナナでもおいてみますか?

コトラボが手掛けた寿町のプロモーションムービー「KOTOBUKI_PROMOTION」

“マチづくり”を、“モノづくり”ではなく“コトづくり”からはじめる会社


編集長YOSHより

この連載「トム・ソーヤーのペンキ塗り」は、日本のあらゆるソーシャルイノベーションの中心で活躍し、たくさんの社会起業家を応援してきた井上英之さんと、日常の中の”Quality Time”をテーマに都内52駅で配布されているフリーペーパー「metro min.(メトロミニッツ)」とのコラボレーション企画です!

やる側も楽しく、社会も良くなり、ビジネスにだってなり得てしまう。そんな三方良しの「トム・ソーヤーのペンキ塗り」的FUN!が満載のソーシャル・デザインプロジェクトを紹介しています。

また、メトロミニッツの最新号の特集は「ふるさとを2つも、3つも持っていたっていい」というメッセージをこめた「ふるさとツーリズム」特集。都市と地方という短絡的な対比ではなく、何かあったときにふと帰ることができるような”ふるさと”を持つことは、今の時代にとっても大切なことですね。

表紙の梅佳代さんの写真もインパクト大です!東京の方はぜひ見つけたらお手にとってみてください。

metromin

writer ライターリスト

池田 美砂子

池田 美砂子

greenz シニアエディター/シニアライター 神奈川県茅ヶ崎市在住、ひとりの娘のお母さん。 電機メーカーSE、気象コンテンツプロデュースなどを経て、2008年にグリーンズと出会いました。以来、人の話をありのままに聞くインタビューをライフワークとしています。 ビジョンは、「ありのまま、そのままの自分を肯定できる人を増やす」こと。多様な個があふれ、互いにそれを認め合い、一人ひとりが、大切にしたいものを大切にできる社会を実現するための土台となる“心の持続可能性”をテーマに、暮らしの中で、編集・執筆を通して、日々マイ・プロジェクトを実践中。一人ひとりの心が持続可能であることが、持続可能な社会をつくると信じています。 Facebook: http://www.facebook.com/ikedamisako

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