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“農業をかっこいいものにしたい!” 世界初のソーシャルファーマー集団目指して秋田の若手農家が挑戦する「トラ男」

トラ男 秋田の若手米農家たちの挑戦

TAKUMI、YUTAKA、TAKAO、TAKEDAと秋田出身のガテン系(?)男子4人の顔が並ぶ「トラ男」のサイト。元々幼なじみ?と思いきや、このプロジェクトが始まるまでは全くお互い知らなかった4人なのだそう。「農業をカッコよくて儲かる仕事にしたい」そんな思いでつながった一人のウェブデザイナーと秋田の若手農家たち。ソーシャルメディアやブログを書き続けることが本当にお米の販売につながるのか?半信半疑で続けた活動が、徐々に実を結びつつあります。

“トラ男” プロジェクトとは?

プロジェクトの発起人はメンバーの中では唯一農家ではない武田昌大さん。秋田県の出身ですが、昨年まで東京でウェブサイト制作の学校に通う都会に住む若者でした。農家とは縁も所縁もなかった彼が、秋田農家の高齢化や減少している現状を知り、「農業をもっとカッコイイと思える仕事にしたい」と動き始めたのが始まりです。
 
武田さんは何度も秋田へ足を運び、農業に携わる多くの人たちに話をきいて周りました。その過程で、ある事実を知ります。

秋田の米農家でつくられた米は、いったんJAに販売されると、他の農家でつくった米とブレンドされて一定の品質で「あきたこまち」として販売されます。つまり、質のいいお米をつくった農家もそうでないところも、混ぜられてしまうと得られる評価や金額が均一になってしまう。それはいい面もあるかもしれないけれど、モチベーションがわきにくいと思うんです。

そこで考えたのが、賛同してくれる若手農家と質のいいブランド米をつくり、オンラインで販売しようというもの。そこまでならよくある直販と同じですが、『トラ男』が他と違うのは、ソーシャルメディアを使うなど、徹底して「お客さんとのコミュニケーション」の場をつくろうとした点です。

公式サイト、Facebookなどに場を設け、実際にイベントも打ち始めます。“通常より高くても質のいいお米を、きちんと顔の見えるお客さんに届けていこう”という試みと、“農業をやっている若者の本物のかっこよさ”を伝えたいという両方を実現しました。

photo2 トラ男ブランド米

photo3poster

目指すは、世界初のソーシャルファーマー集団

武田さんは賛同してくれた農家の3人とメンバーの顔が見えるサイトを立ち上げ、直接お米を発注できる仕組みを用意しました。その公開は昨年9月のこと。公式サイトの他にもtwitterやFacebookなどのソーシャル機能を取り入れ、農家の3人に日々起こったことや感じたことをブログやtwitterを通して発信してもらいます。

彼らのツイートには、農業だけではなく冬の間行っている別の仕事のことや、プライベートなこともたくさん。

yu_torao
除雪だぁぁ!!!っしゃ!

yu_torao
おはょーございます!!仕事だぁ!ヤル気出せおれ>< taka_torao
ネギを確認したら葉の中がシャーベット状に固まっていた。もう少し掘り置きしとくんだった!今となっては遅いが…

taku_torao
今日は仕事休みですが、家の小屋の脇に溜まった雪を除雪しなければなりません!ほんとうは今日デートの予定でした(^o^)が、昨日断られました。SHOCKデカすぎる…

初めのうちは、どんなに頻繁にブログを更新してもリアクションも少なく、本当にこんなことが米の売上につながるのか?と、皆半信半疑だったのだとか。それでも、彼らの活き活きした言葉に少しずつファンも付き、注文も入ってリピーターも現れました。
すでにYUTAKAさんのお米は完売に!

Faceookトラ男

秋田だけでなく全国の農家へ

その後武田さんは、オンラインだけでなく実際に消費者と接触できる機会をつくっていきます。トラ男と一緒に稲刈りを行うイベントや、八百屋での販売、新米試食のおむすびづくりなど、毎回企画を変えて10~20人の小規模のイベントをうちました。時には東京でのイベントへメンバーにも出向いてもらい、直接お客さんと話してもらったり。今年の5月には農業体験と彼らの自宅への宿泊ツアーも計画しています。

これまでのイベントレポートはこちら。

photo4 イベント

photo4 おにぎり

昨年はリスクを抑えようと、もともと市場に出さない自家用米を『トラ男』での販売に充てていましたが、今年からはプロジェクトを法人化して、きちんと在庫をもって販売することを考えています。

誰でもいいという訳ではないですが、参加してくれる農家がもっと増えたら嬉しいです。農業の問題は秋田だけの問題じゃないから、将来的には全国に広げていけたらとも思っています。

左からTAKUMI、TAKAO、YUTAKA

左からTAKUMI、TAKAO、YUTAKA

メンバー同士で集まって話し合うたびに熱く語り合い、モチベーションも上がるのだそう。

何よりお米を安価でJAに販売するしかなかった彼らが自分たちの販売手段を手に入れたこと、そして消費者が目の前で自分の米を美味しいと食べてくれる喜びを知ったこと。売上はまだまだでも、得たものは予想を超えて大きなものでした。

“トラ男”プロジェクトを知る