『ありあまるごちそう』 – 食糧の不均衡は解消できるのか?〜映画で「食の社会見学」〜

(c) Allegrofilm 2005

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1月、2月と連続して公開される「食」についてのドキュメンタリーを紹介するシリーズの2本目、ヨーロッパ編『ありあまるごちそう』です。アメリカ編の『フードインク』では食の過剰について書きましたが、今回はそれとも関係してくる「食糧の不均衡」について。世界を十分に養えるほどの食糧が生産されていながら、何億人もの人々が飢えている現状について考えたいと思います。

『ありあまるごちそう』は世界に今も根深く存在する飢餓を問題視し、それを解消するために必要なのは、メカニズムの理解と流通の変化であると考えて作られた作品です。ヨーロッパを中心にどのように食糧が流通していくのかを観察し、それと飢餓がどう関係してくるのかを考察していきます。

たとえば、作品の冒頭に登場するのはオーストリアのウィーンで廃棄される大量のパン、廃棄される量はオーストリア第2の都市グラーツの市民全員が食べるのに十分なほどの量なのだそう。そして、そのパンの原料となる小麦はインドからの輸入品なのです。

(c) Allegrofilm 2005

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あるいは、スペイン南部で栽培されるトマトは北欧へとトラックへ運ばれ販売されますが、その栽培に従事する人の多くはアフリカからの不法移民であり、使われていないビニールハウスにテントを張り、焚き火をして生活しているのです。

この事実からどのようなことが考えられるか、その問いがこの作品の放つメッセージなのです。

最後にはなんと世界最大の食品会社のひとつネスレのCEOが登場します。このインタビューがすごい。彼は自信満々に自社がいかに先端技術を用いているかや、どれだけ多くの社員を養っているのかについて語ります。しかし、ここに至るまでにさまざまな事実について学んだ観客には、彼の言葉に現れない原料生産者などの姿が見えるのです。

この作品は私たちに今まで知らなかった事実を伝えてくれることも確かですが、さらに素晴らしいのは、その事実が何を意味するか、それを私たち自身に解釈させているという点です。私たちはただ教えられたことよりも、自分で考えて導き出したことのほうをより強く記憶します。だからこの映画で提示された事実から自分で考察したことは観客の身になるのです。

『フードインク』は現状を分かりやすく解説するという点においては非常に優れた作品ですが、映画を観ながら観客に考えさせるということはしません。もちろん映画を見終わった後にはいろいろ考えることになりますが、映画を観ながらあれやこれやと考察をすることはあまりないのです。それに対してこの『ありあまるごちそう』は考えながら見ないとその本当の意図を読み解くことができません。それは一面では分かりにくいということでもありますが、別の面を見ればより深く考えることができるということを意味するのです。

なので、『フードインク』を観て物足りなさを感じたという意識の高い人にはぜひこの『ありあまるごちそう』を観て欲しい。また『フードインク』を観て感心した人はこの作品でさらにもう一歩踏み込んで欲しい。そのように感じられる作品です。

果たして21世紀の「食」はどこに向かうのか、そして私たちは何をすればいいのか。それを考えるためにはまず映画で「社会見学」を。

「食の社会見学」1『フードインク』

ありあまるごちそう
2011年2月19日(土)、全国順次ロードショー
2005年/オーストリア映画/96分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
原題: WE FEED THE WORLD
配給:アンプラグド
公式HP

(c) Allegrofilm 2005

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