薬の原料である植物も絶滅の危機に?! COP10関連イベント「地球の薬箱を救え」!

ヤナワナ族のペインティング用植物、ウルク

ヤナワナ族のペインティング用植物、ウルク

朝晩ずいぶん冷え込むようになったこの季節。皆さんは体調を崩されていませんか?そんな体調を崩しやすいこの季節に欠かせないのが、「薬」です。

今、薬の原料となる植物の多くが、絶滅の危機にさらされているということをご存知でしょうか?今回は、10月18日から名古屋でおこなわれているCOP10(生物多様性国際会議)のサイドイベントとして行われたシンポジウム、「地球の薬箱を救え。」にお邪魔して、薬の原料となっている植物の現状について聞いてきました。

▼薬用植物の現状は?

生まれたときから都市に暮らす人が多く、薬といえば病院や薬局で買うという選択がほとんどの私たち。ある日突然、「この薬は原料の植物が絶滅したので、今日から生産できません」と言われても、なす術がないのが現実です。

今や世界で、薬用として用いられる植物は、5~7万種。そのうち、約21%の1万5千種が存続の危機にあります。

中でも、日本の薬用・アロマティック植物の輸入金額は、米国、香港、ドイツに次いで世界第4位(2007年)。その約88%を輸入に頼っているのだそう。( TRAFFICレポートより)

▼「地球の薬箱を救え」!というメッセージ

「地球の薬箱を救え」

「地球の薬箱を救え」

「地球の薬箱を救え。」セミナーでは、野生の薬用植物の利用と取引をテーマに、中国、ケニヤ、アマゾンの薬用植物の生息地から3人の賢人が招かれて、対策が話しあわれました。

原住民には、ほとんど西洋医学に頼らず、口承で伝わる伝統的な植物医療を利用している人々がいます。その現地に、外部から人が入って医療法を悪用したり、植物を採って森林を荒らしたり、という問題が起こっているのだとか。

中国で伝統医療を行っている医師、ヅァン・イー氏は次のように話しました。

多くの薬用植物が危機に瀕しており、すでに野生には生息しないものもあります。必要なのは、採集する人々が、植物のことをもっと知るべきだということ。採集する適切な時期、量、方法を知らなければ、根こそぎ採って根絶させてしまったり、時期を誤ると種を痛めてしまったりします。現地の栽培者へのトレーニングや指導を行い、野生だけに頼らず栽培も積極的に行うことです。

3人の賢人。(左)アマゾンのヤナワナ族のチーフ、タシュカ・ヤナワナ氏/(中)ケニヤのイヤク族のリーダー、アンドリュー・レレコイティエン氏/(右)中国伝統医療の医師、ヅァン・イー氏

3人の賢人。(左)アマゾンのヤナワナ族のチーフ、タシュカ・ヤナワナ氏/(中)ケニヤのイヤク族のリーダー、アンドリュー・レレコイティエン氏/(右)中国伝統医療の医師、ヅァン・イー氏

主催者であるTRAFFICは、動植物の公正な取引や、自然保護の調査・監視を行うNGO団体。彼らが実際におこなったケーススタディから発表した内容は、3人の賢人たちのメッセージと共通したもので、以下のようなことでした。

・採集者に、収穫の時期、量、持続可能な採集方法の適切な指導を行い、トレーニングすること。
・販売の流通ルートを確保し、公正な価格取引がされる仕組みづくりが必要。
・消費者もむやみに薬を摂取するのではなく、植物の効能をよく知ることが大切。

▼世界的な美容企業と、新しい試みを行うヤナワナ族

けれど、彼らのように、薬になる植物が生息する環境や、術もない私たちが、輸入に頼るしかない場合には、いったい何ができるの?

このヒントになりそうなお話を、セミナーの後、アマゾンのヤナワナ族のチーフ、タシュカさんに、お時間をいただいて伺うことができました。

ヤナワナ族のチーフ、タシュカ・ヤナワナ氏

ヤナワナ族のチーフ、タシュカ・ヤナワナ氏

タシュカさんが率いるヤナワナ族は、アマゾンのアクレ州で暮らす700人ほどの原住民。狩猟や釣り、農耕などを暮らしの基本にしています。この村では、体の不調は、魂の不調からくると考えられてきました。

一族の中にヒーラーと呼ばれる人がいて、彼がどの薬草が必要かを選び、必要な分だけを採取します。薬草は、食料としてはもちろん、女性の避妊薬としても、蛇に噛まれた際の治療薬としても、合う種類を私たちは知っているのです。

アマゾンのヤナワナ族の方に聞く植物の話

ヤナワナ族の方に聞く植物の話

けれど、教育や建築、やむを得ない場合の西洋医療には、お金がかかります。以前は、自分たちが採集するものを、ブラジルの商人に売って、お金を得ていました。が、彼らとのビジネスは常にそのルートが複雑で不透明なことが多く、相場も不安定、と悪条件。

しかも、外部の人々がやってきて、ヤナワナ族の薬用植物の知識を自分たちだけの利益にしようとしたり、そのノウハウを他の地域へ広めて勝手に商売する、といったことが起こりました。

そんな時に、タシュカさんは世界的な美容コスメ企業AVEDAの創始者、ホーストレッケルバッカー氏と出会い、AVEDAとビジネスを始めます。ヤナワナ族がフェイスペインティングに使う「ウルク」という実を、AVEDAのコスメの原料として販売する提携でした。

ウルクを使ったフェイスペインティング(ヤナワナ族)

ウルクを使ったフェイスペインティング(ヤナワナ族)

AVEDAとの取り組みでいいところは、植物を売買するだけでなく、ヤナワナ族の知識を利用することそのもの、つまり、ノウハウだけを奪っていくのではなく、私たちの名前やイメージをブランディングに使い、そのことにも、きちんと対価を払ってくれていることだ。

提携のよい点をまとめると以下のようなこと。
・透明性のあるきちんとした契約が交わされていること
・原材料の売買といった取引だけでなく、植物に関して彼らのもつ知識や伝統に対する対価がきちんと払われていること
・利益重視の、大量生産、スピードといった一方的な基準を押し付けず、原住民側の自給自足的な暮らしを尊重する形での契約がされていること

特に3番目はもっとも難しい点なのでは?と思わせられます。
ヤナワナ族の生活のペースを守るために、一定の量までは収穫を約束するけれど、これ以上は無理というラインをきちんと設けていること。当たり前のことのようでいて、営利企業にとっては、なかなか難しいところです。

最後に、タシュカさんは言いました。

これから先私たちは、もはや先進国、原住民といった境はなく、皆が地球の一員です。今はまだAVEDAのような企業はほんの一部かもしれませんが、数年後には、人々も、モノを買うにもその背景をきちんと知った上でプロダクトを選ぶようになると思います。自分がこのプロダクトを買うことが、地球にどんな影響があるのか、自分もつながっているということを把握して買い物をするということです。

ヤナワナ族とAVEDAの取り組みは、産出国と先進国企業の関わり方のひとつの例になるでしょう。その時もっとも大切なのは、先進国側が、自分たちの基準を押し付けずに、相手に合わせた提携ができるかどうか。

搾取するのではなく、彼らの知恵に学ばせてもらうこと

そんな意識を大切にすること。そして商品を買う私たちが、少しでも安いものに群がるのではなく、背景を知った上で、正当な対価を支払うこと。こういった取組みが、薬用植物の面でも広がることを、期待したいです。

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