カンヌ2010受賞のソーシャル広告(9)映像で、音で、数十秒で心を動かす

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カンヌ受賞のソーシャル広告、今回はCMを評価する部門からです。どれも銅賞です。

UNICORN / LG ELECTRONICS /
MOBILE PHONE MISUSE AWARENESS /

日本でもそうですが、アメリカでもティーンネイジャーはメールに夢中。たくさんのメールのやりとりのなかで、性的な写真を送ってしまい、問題になるケースも少なからずあります。そこでLGは、軽々しくメールを送る前に、よ~く考えよう、というキャンペーンを実施しました。あごひげがトレードマークのおじさんタレントが、自分のひげをティーンネイジャーに授け、「そのひげが自分にもついていると想像して、メールを送る前によ~く考えよう」と呼びかける内容です。あごひげが生えている人は、考えるときにあごをさすりさすりしますよね。バカバカしい広告ですが、お説教に耳を貸さない若者でも、ついついマネしちゃう。そんなCMです。

GRAFFITI / AIDES /
AIDS AWARENESS /

いつもクオリティの高いエイズ啓発CMをつくっているAIDES、今年もクールです。トイレの落書きの男性器くん、パートナーを求めて女性器の落書きにアプローチするのですが、みんなから逃げられてしまいます。しょんぼりとしていると、化粧直しをしていた女性が口紅でコンドームをイタズラ描き。すると突然モテるわモテるわ。セーフセックスをすると、安心しておつきあいしてもらえますよ、という内容ですね。

EMBRACE LIFE / SUSSEX SAFER ROADS PARTNERSHIP /
SEATBELT AWARENESS /

これまでシートベルト着用をよびかける広告は、血の気がひくようなものが多かったような気がします。でもこのCMは、全くちがうアプローチ。シートベルトは、愛する人たちのように、あなたを守っているんです、ということですね。ショッキングなCMは思わず目を背けたくなっちゃいますが、これはあったかいので、繰り返し見ようと想いますね。メッセージもユニークですが、演出も変わっていて、印象に残ります。

CHANCE / INPES /
ANTI-SMOKING AWARENESS /

これは壮大なCMです。宇宙ができて、ひとりの人間が生まれるというのは、奇跡的な確率なんだと長々と説明され、そして最後は、タバコを吸う男性の映像になります。コピーは「喫煙者の2人に1人は、タバコによる病気で死にます。」いま生きているという奇跡を、タバコで失っていいのだろうか、そんなことを考えさせるCMです。う~ん、デカい。

POLAR BEAR / PLANE STUPID /
AVIATION ENVIRONMENTAL AWARENESS /

空から落ちてくる、たくさんのホッキョクグマ。ビルに当たったり、地面に叩き付けられたり…。見ていられないくらい痛々しい映像は、こんなコピーで締めくくられます。「ヨーロッパでは、フライトのたびに、ひとりの乗客あたり400キロ以上の温室効果ガスを出しています。それは、大人のホッキョクグマ一匹の重さと同じです。」私たちが空を飛ぶことは、ホッキョクグマを空から落とすのと同じくらいのインパクトを環境に与えているんだ、そんなメッセージですね。

DEATH PENALTY / AMNESTY INTERNATIONAL FRANCE

死刑をしている人、されている人が、どんどん溶けていきます。映像は、アムネスティのシンボルであるろうそくの火で終わります。コピーではこう締めくくります。「139の国では死刑がなくなりました。あと58の国に、説得しないといけません。」私たちの心に眠っている良心と勇気に、強いビジュアルと美しい音楽で訴えかけます。

FORGOTTEN ANIMALS DAY / XXS/DIERENBESCHERMING /
ANIMAL RIGHTS CHARITY /

実験のために、食べるために、娯楽のために…。動物たちが受けているひどい仕打ちを、紙とイラストを使って表現しています。実写ではとても見せられないようなことを、私たちは動物たちにやっているんですね。救いのあるラストシーンで、動物たちとの生き方を変えるのは、私たち自身の意識と行動だということを伝えています。

TURN AROUND / BARNARDO’S / CHARITY /

最後は子どもたちを守る団体のチャリティCMです。旅行に行って男の車に乗り、ドラッグ漬けになる女の子。映像は途中で逆戻しのようになり、ストーリーは薬漬けになった少女が団体の手助けのおかげで家に帰るというものになります。そしてコピー。「私たちは毎年、3,000人もの子どもたちが生活に戻る手助けをしています。でも、私たちにはあなたの支援が必要です。ウェブサイトにきてください。」映像が巧みだと、説得力を増しますね。

カンヌ受賞CMの紹介、最終回の次回は、映像を技術的な面から評価する、フィルム・クラフト部門の受賞作からご紹介します。