楽しさは「いのち」と「つながり」の中に 祝!スローコーヒー10周年

有限会社スロー代表・小澤陽祐さん

有限会社スロー代表・小澤陽祐さん

「ブラジル産・カルロスさんのコーヒー」をはじめ、世界各地のフェアトレードコーヒーを自家焙煎して提供する「スローコーヒー」が、この7月で創業から10年を迎えます。
greenz.jpではこれまで、ブログメンタリー記事を通じて、有限会社スロー代表の小澤陽祐さんに注目してきました。「楽しく生きるという人生のテーマは変わらないけれど、近頃は家族の幸せや次の世代のことも考えるようになった」という、小澤さんの心境変化の理由とは?
これまでの10年、これからの10年とともに語っていただきましょう。

自分のルーツと「生きる力」

「初めて店舗を出したというのはもちろんあるし、結婚して家族ができたのも大きいですね」
昨年10月にカフェ「スローコーヒー八柱店」をオープンさせ、そしてこちらも初となる子供が生まれたという小澤さんは振り返ります。

スローコーヒー八柱店。昨年10月にオープンした

スローコーヒー八柱店。昨年10月にオープンした

「今の自分の命は『めっけもん』だと思うんです。東京の下町で暮らした祖母は東京大空襲の中、背中に僕の母を背負いながら逃げて、生き延びました。その話をきいて、母がもしそこで死んでいたら今の自分はなかったと考えると、今生きてることに感謝して一所懸命生きなきゃ、と思うようになりました。

けれども今、自分にも子供ができて、改めて今の子供たちを見てみると、自分の頃より元気がない気がします。何があっても生きぬく力、元気をどう次の世代に受け継いだらいいのか、考えてます」

カフェの奥にはドッグサロンが。テラスで愛犬とくつろげる

カフェの奥にはドッグサロンが。テラスで愛犬とくつろげる

そんな小澤さんが好きなマンガの一つが「はだしのゲン」。小学生のころ、学校の図書室で読みふけっていたとか。
「ヒロシマの焼け野原でしぶとく元気に育ったゲンのバイタリティが、自分のルーツでもあるんです」
小澤さんのモットーである「楽しく生きる」のベースに、貧しさや逆境もものともしないゲンの明るさがあったとは、ちょっと驚きです。

コーヒーを通してスローの楽しさ、豊かさを伝える

そんな小澤さんは、なかなか儲けが出ない時期を経たりしながらも10年かけてスローコーヒーを育て上げました。その強みは「いのちを大事にし、育むこと」です。

エクアドルのインタグ・コーヒーは『アグロ・フォレストリー』という栽培方法で育てています。大規模コーヒー農園は普通、熱帯雨林を切り開いて、大量の農薬を使ってコーヒーを育てる。けれどもアグロ・フォレストリーでは森の中にコーヒーの木を植えます。コーヒーは森の中のちょっと日蔭のほうがおいしくなるし、森が保たれるから土砂崩れもない。野鳥のフンは肥料になります」

コーヒー豆は産地だけでなく、その日の気温や湿度に応じてもローストの度合いを変えている

コーヒー豆は産地だけでなく、その日の気温や湿度に応じてもローストの度合いを変えている

まさに生物多様性を味方につけたコーヒー。小澤さんはインタグコーヒーのことを「ちょっとすごいコーヒーなんです」といって笑います。

カルロスさんも、ブラジルで先駆けて有機栽培を始めた時は全く相手にされなかった。けれどもオーガニックコーヒーが認められた今では地域全体で有機農業を奨励するまでになりました。そういう生き方はカッコいいでしょう? スローなコーヒーを楽しむことは、いのちの豊かさや作る人の生き方に触れることでもあって、だからこそ味わいも一層深まると思うんです」

次の10年はスローコーヒーの時代!?

大手コーヒーチェーンやファストフードが安い値段でそれなりにおいしいコーヒーを提供する今日ですが、「それでは世の中の不公平が広がるだけ。そもそもトレードはフェアであるべきで、フェアトレードなんて言葉が生まれること自体が異常」と考える小澤さん。これからの10年を見据え、「ファストコーヒーではなく、スローコーヒーを」というムーブメントを起こしたいと考えています。

ドギーバッグ。カンタンに折りたためて、繰り返し何度でも使える。500円

ドギーバッグ。カンタンに折りたためて、繰り返し何度でも使える。500円

「まずはおしゃれな食べ物用エコバッグ『ドギーバッグ』を普及します。ワンタッチで折りたため、しかも洗って何度でも使えるので、使い捨ての紙箱を使わなくてイイんです。次にオーガニックコーヒーのひとときをより豊かにするスイーツの開発。そしてここ、八柱店を軸とした地域とつながるイベントの開催です。先日も『八柱オーガニックデイ』を開催したばかりですが、近所でフェアトレードビジネスを手掛けている人と友達になったり、新しいつながりが生まれています」

「コーヒーを接点に、世界につながりが広がっていくのが楽しい」と笑う小澤さん

「コーヒーを接点に、世界につながりが広がっていくのが楽しい」と笑う小澤さん

スローコーヒーが提供するのは、コーヒーの形をした豊かな時間とつながりです。それはファストなコーヒーが置き去りにしたものであり、効率の視点からすれば「ムダ」そのもの。しかしムダの中にこそいきいきとしたいのちの余地があり、文化が育まれるということを、スローコーヒーの味わいは教えてくれます。

一杯のコーヒーの向うに広がるスローな楽しみを、あなたも味わってみませんか?

スローコーヒーの最新情報はこちら。コーヒー豆なども購入可!

スローコーヒー八柱店に行ってみる!