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龍馬の魂ここにあり!21世紀のトップランナーを目指す高知県の試み

2010年NHK大河ドラマ「龍馬伝」

2010年NHK大河ドラマ「龍馬伝」

来年2010年のNHK大河ドラマは『龍馬伝』。主人公はもちろん、土佐(高知)が生んだ幕末の風雲児、坂本龍馬(竜馬)だ。

龍馬が成し遂げたことは薩長同盟大政奉還だけではない。交易による富国を目指し、日本初の株式会社とも言われる海援隊(亀山社中)を設立し、船中八策で明治新政府の骨格を作った。自由民権思想に感化され、多くの人に影響を与えたとも言われる。悲運の死後、交易による富国を目指す志は、三菱グループの祖、岩崎弥太郎に、自由民権思想は板垣退助に受け継がれた。岩崎、板垣はともに龍馬と同じ時代を生きた土佐人だ。

そして今…。高知県は、先人たちの輝かしい活躍とは裏腹に、経済的には後れをとっている。県内GDPは2.3兆円で46位(内閣府平成18年度県民経済計算)、県民一人当たり所得は217万円で44位(同計算)、工業力の指標となる製造品出荷額等は、沖縄県に抜かれて47位に転落した(経済産業省平成20年工業統計速報)。

この現状に、忸怩(じくじ)たる思いを抱いている土佐人は少なくないという。龍馬の死後150年近く経った今、いくつかの試みが始まった。それは、環境の世紀21世紀でトップランナーを目指す試みと呼んでいいだろう。

大川村まるごと!省エネ電球取り換え大作戦

大川村は、四国山脈の中央に位置する山村だ。人口は約500人。離島を除けば、日本一人口の少ない自治体だ。ここ大川村で、2009年10月の3連休中に、村にある約1,200個の白熱電球を全て、省エネ電球に切り替えるプロジェクトが実施された。年間約28トンのCO2削減と節電効果が見込まれている。

この作戦は、「高知県地球温暖化防止県民会議」の「県民活動促進部会」で提案され、実現した。同会議は、高知県内の市民団体や事業者、自治体などが参加する任意団体で、高知県民の環境意識を高めるとともに、事業者、行政も一体となって温暖化対策に取り組んでいくモデル作りを目指している。

省エネ電球取り替え大作戦の報道の様子(FNNスピーク)

省エネ電球取り替え大作戦の報道の様子(FNNスピーク)

これまでにも、企業や自治体で似たような取り組みが行われているが、自治体丸ごと、というのは初の試みで、全国ネットのニュースで報道された。人口の少なさを逆手にとって、村の取り組みをアピールすることに成功した。関係者は、今回の事例を通じて、高知県内のみならず、日本中に環境意識がさらに広まることを期待している。

カーボン・オフセット・クレジット(J-VER)第1号案件

カーボン・オフセット・クレジット(J-VER)とは、温室効果ガスの排出削減量、吸収量を、排出権(クレジット)として認定し、売買できるようにする仕組みのこと。京都議定書が定める排出権取引とは異なる日本独自の取り組みだ。そのJ-VERの第1号案件として、高知県の森林バイオマス燃料を使った化石燃料代替プロジェクトが認定され、約900トンのCO2排出権を約330万円でルミネに売却することが決まった。

高知県木質資源エネルギー活用プロジェクト 環境省「排出量取引インサイト」より引用

高知県木質資源エネルギー活用プロジェクト 環境省「排出量取引インサイト」より引用

J-VERは動き出したばかり。その第1号案件として認定されたことで、高知県のプロジェクトが、この先もモデルとして注目を集め続けることは間違いない。

高知の豊かな自然を活かせ!「84プロジェクト」。

高知県には豊かな自然がある。森林率は日本一の84%を誇りナスにショウガ、ミョウガ、シシトウ、ニラ、ピーマン、キュウリ、オクラなど、野菜の生産も全国有数だ。漁業も盛んで、まぐろやかつおの生産量も全国で上位を占める。「最後の清流」と言われる四万十川でも有名だ。

84(はちよん)プロジェクト

84(はちよん)プロジェクト

84(はちよん)プロジェクト」では、森林をはじめとする豊かな高知の自然資源を活用、ブランド化し、高知の経済を活性化することを目指している。名前は、森林率の数字から。発起人は、高知県を拠点に活動するデザイナーの梅原真(敬称略。以下同じ)。「D&Department」のナガオカケンメイも賛同人に名を連ねている。
梅原は、バブルの真っ只中に、グローバリゼーションの到来と、その先に来る地域の時代を予見した。地域が都会の豊かさを追うのではなく、そこにある独自の資源で豊かになっていく活動に一貫して取り組み続けた。「藁焼き鰹たたき」「砂浜美術館」「四万十ドラマ」「高知アイス」など、梅原が関わった商品やプロジェクト、企業は次々とヒットを生みだした。その梅原が手掛ける新しいプロジェクトなだけに、期待せずにはいられない。

桂浜から世界に思いを馳せた坂本龍馬。山村、森林、自然資源、いまここにあるものから世界を見据える現代の高知県民。アプローチは違えど、時代を切り開こうとする思いは共通だ。土佐の魂ここにあり。環境の世紀のトップランナーを目指す高知県の試みから目が離せない。