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エコ&クールにファッションを楽しむ。新しい時代のグリーンファッション

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ニューヨークを拠点に、ファッションビジネスコンサルティング代表としてグリーンファッションの動向を見つめ続けてきた田中めぐみさんがこの度、「グリーンファッション入門:サステイナブル社会を形成していくために」を出版されました。今回は、著者本人である田中さんに書籍のご紹介をしていただこうと思います。

ファッションと環境問題は、相容れないように見える。なぜなら、ファッションはトレンドを前提に成り立っているからである。

現在生産されている服のほとんどは、寒さや熱から身を守るための「衣服」ではなく、楽しむための「ファッション」であり、人類が生存するための基礎的手段としては本来不必要なものといえる。生きるために必要な服ならば、先進国ではほとんどの人が既に十分手に入れているだろうし、買い換えるとしても毎年ほんの数枚で済むだろう。しかし、それではビジネスとして成り立たないため、半年毎に変わるトレンドという概念を作り出し、消費者の購買意欲を煽ることによって、大量の服や小物を生産・販売し、金を循環させてきた。それが現代ファッションの姿である。

ところが、環境問題や社会問題が深刻化する中で、不必要な物を生産・流通・消費することによる弊害が浮き彫りになってきた。限りある資源を使用して無駄な物を生み出し続ければ、いつか資源は枯渇する。そんな当たり前のことが、ようやく今、わかってきたのである。

しかしながら、現代社会に生きる私たちにとって、ファッションはなくてはならない存在である。毎日同じ服を着て会社や学校へ出かけるわけにも行かず、特別なオケージョンではやはりおしゃれを楽しみたい。ファッションは自分を表現するツールであり、欲しい服やバッグを購入することで精神的満足を得ることもできる。そうした楽しみを知ってしまった現代人にとって、環境問題が深刻化したからといって、急にファッションを楽しむことをやめるわけには行かない。いつか石油や水が枯渇し、生きるために必要な物資が十分に行き渡らない時代が来れば、ファッションは真っ先に排除対象となるだろうが、そうならないためにも、今行動を起こす必要がある。

そのために必要なのが、グリーンファッションである。すなわち、デザイン性を妥協することなく、環境や社会への負荷を削減したファッションのことである。これまでの、エコとファッションは両立しないという定説を打ち破り、欧米では既におしゃれだがサステイナブルなグリーンファッションが浸透しつつある。

本書では、一歩先んじて起こったアメリカのグリーンファッションムーブメントの実状を紹介し、どうすればグリーンファッションを実現できるのか、素材選びから、生産、流通、販売、使用方法、使用後の再利用まで、ファッションのライフサイクル全工程において、その手法を論じている。

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Organic by John Patrickのホームページ

また、「オーガニック」のデザイナー、ジョン・パトリック氏や減農薬コットンを促進する「サステナブルコットンプロジェクト」のリンダ・グロース氏など、グリーンファッションデザイナーや環境団体・リサイクル企業トップなどへのインタビューを通して、サステイナブルなファッションのあり方やファッションが環境や社会に与える影響なども伝えている。 社会を変えるため、自ら行動を起こし、業界を牽引する彼らの言葉は、多くの人の心に響くことだろう。

グリーンファッションを実現するためには、生産者だけでなく、消費者も意識して行動しなければならない。購入時に素材や生産過程などを考える、必要以上に物を購入しない、購入後には、環境負荷を削減できる洗濯方法を実践する、不要になった服を廃棄せず再利用するなど、消費者ができる対策は多々存在する。

ひとりひとりの心がけにより、全てのファッション製品がグリーン化すれば、遠くない将来、環境を憂うことなくファッションを楽しむ時代が来るかもしれない。しかし、それが実現するか否かは、私たちひとりひとりの行動にかかっている。まずは現在何が起こっているのか、何をすべきなのかを知るべきだろう。本書をお読み頂き、何かを感じ、行動に移すきっかけとして頂ければ幸いである。

「グリーンファッション入門:サステイナブル社会を形成していくために」
田中めぐみ著 繊研新聞社 ¥2,000

著者プロフィール
ファッションビジネスコンサルティング代表
東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒。アクセンチュアにて小売企業向けコンサルティングを手掛けた後、米国ファッション工科大学ファッションマーチャンダイジング&マネジメント学部に留学。2002年ファッションビジネスコンサルティングを設立し、日本のファッション・小売企業、メディア向けにコンサルティングやリサーチを行う。トレンドを前提に成り立つ業界の無駄の多さに疑問を抱き、環境や社会への影響を懸念するようになり、まずは消費者の意識改革を図ろうと07年、環境や社会に優しくかつお洒落なグリーンライフスタイルを提案するウェブメディアNYGreenFashion.comを開設。

現在、地球と共存できるファッション・小売業の実現に向けてコンサルティング活動を展開している。訳書に『ターゲット-全米No.2ディスカウントストアの挑戦』(商業界、2005年)がある。ニューヨーク在住。