太陽の光で進む帆船型探査衛星が来年打ち上げ。ついにソーラーセイルが現実に!

(C) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

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ソーラーセイルあるいは太陽帆といってピンと来る人はきっとSFファンだ。アーサー・C・クラークの「太陽からの風」をはじめとしてソーラーセイルは多くのSF作品に登場してきた。そんなことを書くからには私もそんなSFファンの一人なわけだが、私も含めてSFファンなら一度は夢見たことがある(はずの)そのソーラーセイルを搭載した探査衛星をJAXAが来年度中にも打ち上げるというのだ!

SFに興味がない人でもそのすごさがわかるようちょっと詳しく解説してみよう。

ソーラーセイルというのはわかりやすく言えば、帆船が風を受けて進むように、太陽光を帆で受けて進む宇宙船である。ならば、ソーラーエネルギーを動力にするのかというとそうではない。太陽エネルギーではなく太陽光そのものを推進力とするのだ。

ここからは難しい話になるが、ちょっと我慢して読んで欲しい。

太陽光はもちろん光なわけだが、光は光子(フォトン)という物質から出来ている。その光子は素粒子のひとつである。素粒子は物質の最小単位で非常に小さく、非常に軽い。中でも光子は特に軽く、質量は0である。そしてさらに質量は0なのに、振動し光速で進むため運動エネルギーを持つという特徴がある。このあたりは相対性理論などが絡んできてなかなか理解し難いのだが、重要なのは運動エネルギーを持つという点だ。運動エネルギーを持つ光子がソーラーセイルにあたり跳ね返ると、そのエネルギーによってソーラーセイルに推進力が与えられる。それで宇宙船が進むというわけ。ただ、質量が0なわけだから、その力は非常に弱く宇宙船を進ませるためには大きな帆を張ってたくさんの光子を受け止めなければならないということになる。

太陽光を推進力とするというアイデアは17世紀からあったといわれ、1924年にはすでに太陽帆の理論が誕生していた。それほど昔からあるアイデアなのに、実現に向けて動き始めたのはこの10年ほどのことである。それは、非常に大きくて軽い帆を作る技術がなかったからだ。その技術がここ10年ほどの間に発展し、いよいよソーラーセイルは実現へと歩み始めた。

JAXAが今回計画しているのは、差し渡し20mの正方形のソーラーセイルによって宇宙空間を進む衛星で、セイルの一部に薄膜太陽電池を搭載している(上図参照)。全体の重量は315kgでセイルのみだとわずか15kg、薄さは7.5μm(μmはmmの1000分の1)だ。

薄膜太陽電池を搭載しているのは、将来的に太陽電池によって生み出された電力によってイオンエンジンを駆動させる計画のためで、将来的には直系50mで花のような形をしたイオンエンジン搭載の衛星を作る計画になっている(下図参照)。

greenz/グリーンズ ソーラーセイル計画2
(C) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

この技術が画期的なのは要するにこれは打ち上げたら後はエネルギーをまったく必要としない探査機だという点である。燃料を積む必要もないし、ましてや原子炉を積む必要もない。

しかも宇宙空間でソーラーセイルを展開し、セイル上の太陽電池で発電をし、さらにソーラーセイルによる加速効果を確認するなどのすべてのミッションが成功すれば世界初となるものばかりなのだ。このミッションにより日本はソーラーセイルの開発において世界のトップを走っていることを証明することになる。

いまや宇宙開発も省エネの時代、その先頭を日本が走るときがついにきたのだ!