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途上国の医療に革命を!カメラつき携帯電話が高性能の顕微鏡に!

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo from Plos One

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アジア・アフリカを中心とした途上国の人々が現代の発達した医療の恩恵を受けられていないことはよく知られている。先進国では死に至ることは希なマラリア結核で命を落とす人たちもまだまだ多いのだ。国境なき医師団などの地道な活動はそれなりの成果を挙げているが、設備や人材の問題から救えるはずの命がまだまだ数多く失われているのである。

そんな途上国の医療に革命を起こすかもしれない発明が発表された。それはカメラつき携帯電話に取り付けることができる顕微鏡。どうしてこれが革命なのだろうか……。

この発明がターゲットとするのはマラリアや結核といった血液に感染するウィルス性の疾患である。このようなウィルス性の疾患は血液を採取し、それを顕微鏡で観察することで感染の有無を容易に診断することができる。しかし、そのためには顕微鏡という設備とそれを扱える技師、顕微鏡をのぞいてそれを診断することができる医師が必要となる。その設備と人材を確保することは途上国や僻地ではなかなか難しいことなのだ。

しかし、携帯電話用顕微鏡を使えば、携帯の電波さえ届くところで、血液を採取し、携帯電話で写真を撮ることができれば誰でも診断出来てしまうのである。しかも現在は世界人口の6割が携帯電話を使う時代、携帯電話の電波のカバレッジは驚くほどの勢いで世界中に広がっている。

この携帯電話用顕微鏡を開発したのはUC Berkeleyのダニエル・フレッチャー教授らのグループである。彼らは軽量で高性能の顕微鏡を開発し、それを3.2メガピクセルのカメラを装備したノキアのN73という携帯電話に取り付けた。

顕微鏡としての性能は1.2マイクロメートルのものまで観察が可能なもの。赤血球の大きさは6~8マイクロメートルなので、血液を観察するのに十分な拡大率だ。この顕微鏡で観察した画像がコチラ。

greenz/グリーンズ 鎌状赤血球症
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映っているのは赤血球で、右下のスケールが10マイクロメートル。矢印で示されているのは鎌状赤血球症を発症している赤血球。はっきりと見ることができる。

そして、この顕微鏡と携帯電話で撮影されたデータはデジタル画像であるためにソフトウェアによる解析が可能で、撮影した画像から自動的に菌の数をカウントするという機能も実現されている。下記画像はその機能によってカウントされた結核菌。

greenz/グリーンズ 結核菌
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そしてこれが携帯電話と接続できることの意味は、即座にデータを送信しその結果が得られるというところにある。すぐに診断をして治療をすることができるし、特に伝染性の病気の場合はすぐに対策が取れることで蔓延を防ぐことができる。

また、GPSの機能を使えば診断結果のデータを蓄積し、病気の分布状況を分析したり、今後の感染の傾向を予測したりすることも出来る。

携帯電話を利用した途上国の医療では、医療記録を携帯電話で取り出すことの出来るサービスなども開発されている。それらを組み合わせれば、これまでよりもはるかに少ない人的/物的資源によって途上国や僻地の医療を先進国のレベルに近いところまで押し上げるられる可能性がある。

本格的に生産されるのはまだ先のようだが、需要は必ずある。ぜひ誰もが簡単に手にできるような価格で作って欲しいものだ。