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バリ島グリーンスクール視察レポート(2):大自然に学べ!サバイバビリティ(生きる知恵)が集まったキャンパス

(c)greenschool. 畑で採れたカカオをつかってマイチョコづくりの授業。チョコレートの原料がどこからきて、いかにつくることが大変か、身をもって経験する子どもたち

グリーンスクール視察レポート第2段!今回は、大自然に囲まれたキャンパスの様子とユニークな教育プログラムを覗いてみよう。

すべてが調和・循環するパーマカルチャーデザインのキャンパス

窓も扉もないオール・バンブーの校舎は、型にはまらない子どもたちの想像力(創造力)を育てる。学びの場は、何も教室の中に限ったことではない。10万㎡の敷地そのものがパーマカルチャー(注1)のコンセプトによってデザインされた生きた教材だ。子どもたちは、大自然に囲まれた環境の中で、すべてが循環する仕組みを学び、体験し、サステナブルなマインドを身につけていく。

校舎のまわりに広がる自然のフィールドには、生命があふれている。地元農民によって、米、茄子、トマト、豆、チリ、きゅうり、ホウレンソウ、バジル、レタス、パイナップル、バナナ、ココナッツ、パパイヤ、カカオ・・・・など、たくさんの種類のオーガニック野菜、穀物が栽培されている。

子どもたちは、田植えや、種まき、収穫を行い、畑で採れた新鮮な野菜は、学校が農家から買い上げ、子どもたちとスタッフの給食として調理される。あまった作物は学校主催のファーマーズマーケットなどで販売され、再びコミュニティに還元される。残念ながら、自給率100%ではないが、足りない食材の調達は近隣の農家から行うなど、フードマイレージにも気を配っていることは言うまでもない(畑の地図は、コチラ

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green school students  in the field
(c) green school. 田植えや稲刈りなどの実習も授業の一環だ

自給率というと、もうひとつ気になるのが、エネルギー事情だ。ただ、バンブー校舎の利点は、ほとんど窓も扉もないオープンエアのため、エアコンがないことだ!したがって電力消費量も少ない。いまのところ、牛と人間の糞尿をつかったバイオガスシステムで教室やオフィスなどの主要電力を賄い、竹を加工した際に廃材となるチップを調理やお湯を沸かす燃料として使っているが、食糧同様、こちらも残念ながら自給率100%ではない。今後は小水力発電、ソーラーシステムを導入するなど、キャンパス全体の電力を再生可能エネルギーで賄っていきたい考えだ。

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Choose Your Future と書かれたバイオガス装置。エネルギーを選ぶことは、未来を選ぶことだ。

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(c) greenschool. 世界で2箇所しかない渦巻式マイクロ水力発電(もうひとつは、オーストリア)。現在、建設資金を準備中で本格稼働すればキャンパス全体を賄えるほどの発電量になる

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窓のない教室では、スコールや高温多湿のときは、このドームハウスが避難場所。土壁で造られた室内はひんやりしていて快適だ。

トイレも立派な学び舎だ。こちらのコンポストトイレは、左側が小、右側が大、と用途別に設けられ、子どもたちは遊び感覚で使い分けているという。糞は、バイオガスとして、尿やその他の雑排水は、バイオジオフィルター(植物や微生物など自然の力で水を浄化すること)を通して、土に還り、畑で使われる。気になる飲料水は、井戸水をくみ上げ、BioSystemsという会社の逆浸透装置を通して不純物を除去し、環境負荷の低いカタチでキレイな水を供給、循環する仕組みをつくりあげた。これもパーマカルチャーの基本的な考え方だ。

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独自のカリキュラムで未来のアントレプレナーを育成する

豊かな自然に囲まれたグリーンスクールに集まっている人々も実に多様だ。現在、グリーンスクールに通う生徒は2歳から15歳まで107名、17カ国から(うち日本人1名)来ている。その多くは、バリ島でビジネスを行う駐在員の子どもたち、または我が子をグリーンスクールに入学させるために、わざわざ欧米などからバリに移住してきたリッチな家族。学費が、年間6,000ドル~10,000ドルとバリ庶民の平均的月収6~8千円からすると、それも納得がいく話だ。ただ、グリーンスクールが他の敷居の高いインターナショナルスクールとちょっと異なる点は、サステナビリティを教えるうえでダイバーシティーを重んじ、白人の子どもたちに混ざって、地元の子どもたちが学んでいることだ。これは、総生徒数の20%は必ず地元の子どもたちのために確保しておく、という奨学金制度のおかげ。家庭の収入によってそれぞれが納める授業料は異なるが、最も少ない(貧しい)子どもの負担額は月10ドルほどだ。

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国語や数学のほか、ヨガ、ネイチャーウオーク、インドネシア文化体験など多様な時間割

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(c) greenschool. 国際色豊かなクラス

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(c) greenschool. オープンエアの教室は開放感バツグン!

グリーンスクールのカリキュラムの特徴として、ひとつのクラスにつき、英語教師2名+バリ島のライフスタイルに精通したインドネシア人教師1名の3人体制をとり、バリの伝統文化を学び、経験することが挙げられる。授業はシュタイナー教育にインスパイアされた独自のカリキュラムを組んでいるが、基本的にすべて英語で行われ、正式な学位となるインターナショナル・バカロレアの基準を満たしているため、世界中の高校・大学への進学にも支障はない。

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(c) greenschool. 家具ひとつとってもデザイン性が高い。シュタイナーの思想をうけ、子どもたちの心が落ちつくよう角を丸くした棚

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(c) greenschool. バリの伝統武術を取り入れたエキサイティングな創作舞踊劇、メパンティガンの様子。月1回のショー&発表会には、地元の人も鑑賞に来る

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(c) greenschool.カラダで大地のぬくもりを感じる泥レスリング!.これもれっきとした授業のひとコマ。

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建築の授業で子どもたちがセルフビルドしたもの

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授業の様子は、コチラからもご覧頂けます。子どもたちの楽しそうな笑顔が本当に印象的!!

遮るものがない開かれた教室に、さまざまな生きる知恵が集まった大自然のフィールド。どれもが崇高なグラウンドデザインによって設計され、子どもたちのオープンな思考能力を育てることとリンクしている。多様な国籍、言語、宗教、価値観のなかで創造力(想像力)を開花させ、地球人としてのグローバルな視点やホリスティックな考え方を頭で考えるだけでなく、サステナビリティを心で感じ、自然の中でのサバイバビリティをカラダで覚えることを経験していく、未来のアントレプレナーたち。彼らの将来が楽しみだ。

最終回となる次回は、自然(地球)・地域との共生を目指すグリーンスクールのコミュニティづくりをレポートしよう。

(注1)
パーマカルチャーとは、オーストラリアのパーマカルチャー研究所・所長ビル・モリソン氏が1979年に確立した理論。パーマカルチャーは、①自然そのものを観察し、②世界中の伝統的文化の知恵を学び、③現代の知識を融合させ、全ての人に適応可能なようにまとめられたライフスタイルのデザインシステムである。パーマネント(permanent =永久の)とアグリカルチャー(agriculture 農業)をあわせた造語である。パーマカルチャーには、植物、動物、建物および(水・エネルギー・コミュニケーションなどの)生産基盤などを扱う側面もあり、それらの要素をその場所の中にどのように配置、組み合わせるかで、生態学的に健全、且つ経済的にも成り立ち、長期にわたって持続しうるシステムをつくり出すことが目的とされている。

【お知らせ】

できることなら我が子をグリーンスクールに!!と思った親御さんもいらっしゃるのではないかなと思い、嬉しいお知らせを。

いくらかわいいわが子のため!といえど、家族そろってバリに移住はちょっと現実的ではない・・・・そんな人のために、来年度(2010年8月~)には寄宿制と高校がはじまり、将来的には生徒数を400名まで受け入れ可能だ。いやいや、それもちょっと・・・なんて方は夏から始まったばかりの、>グリーンキャンプがおススメ。

詳細のプログラムは、コチラの通りだが、1日70 ドルから参加できるようなお手軽フィールドキャンプのものから、中長期(最長18日。7月20日から開催)滞在型のサマースクールを開催している。クラスルームでのレクチャーだけでなく、山や川、海での各種アウトドアアクティビティや、バンブー建築ワークショップ、バリの伝統文化を体験し、リーダーシップや、サステナビリティについてホリスティックに学ぶ絶好の機会だ。

さらに将来的には、各国の教育機関、学校と提携し、その学校のニーズにあわせた滞在型プログラムをコラボレーションする予定だ。来年には、英語が苦手な日本人にとって嬉しい、英語を母国語としない人たちのためのESLプログラム(ESL = English As Second Language)を開始することも検討中!greenz.jpでも引き続きその動向をウオッチしていくし、コラボ企画を作っちゃうかも?!

詳しくは、green schoolに問い合わせを!