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「ミネラルウォーターってどうだろう…」をちょっと真面目に考えてみた

Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by Tywak

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今では当たり前に飲まれているミネラルウォーター、水道水よりおいしいし、持ち運ぶのにも便利。でも、たまっていくペットボトルを見ると少し後ろめたい気分にもなる。ただ漠然と後ろめたい思いを抱えているのもなんだから、ペットボトル入りのミネラルウォーターが環境にどんな影響を与えているのかを知って、付き合い方を考えてみようじゃないか!

日本ミネラルウォーター協会によると、日本人が2007年に消費したボトル入りのミネラルウォーターは約25億リットル、一人当たり約20リットルだ。一人当たりの消費量は欧米と比べるとたいした数字ではないけれど、日本に特徴的なのは輸入の割合の多さだ。日本では20%以上を輸入物が占めているのに対し、アメリカはわずか2%である。

サステナブルな社会という観点からこのことを考えると、その輸入にかかるエネルギー、その輸送の際に発生するCO2が気になる。

市民科学研究室の試算によると輸入ミネラルウォーターのフードマイレージは約100億tonkm、国産ミネラルウォーターは5億tonkm、量では20%を占めるに過ぎない輸入物が国産の20倍の値となっている。CO2については正確なところはわからないが、「地元産の製品を選ぶようにすれば外国産の10分の1以下にCO2排出を抑えることが可能になる」と推定している。ただ、国内産でも遠隔地の場合、宮崎から東京にトラックで輸送した場合のCO2排出量が253gであるのに対し、オレゴン州から東京まで陸路と船で輸送した場合のCO2排出量が294gと試算されてもいて、国内産のほうが輸入よりもCO2排出量が小さいと一概には言えないことも確かなようだ。

CO2やエネルギーという観点からは、ボトリングに使用されるペットボトルも気になる。

アメリカでは、2007年に消費されたミネラルウォーター(約330億リットル)を生産するために使われた石油は3200~5400万バレル(51~86億リットル)だという。つまり、生産される水の4分の1から6分の1の量の石油が必要だということだ。

日本ではペットボトルのリサイクル率が高まっており、アメリカほど石油が消費されているとは思われないが、リサイクルにもエネルギーは必要だし、その効率はアルミ缶などと比べると低いといわれる。つまり、ペットボトル入りのミネラルウォーターを飲むたびに石油を相当量消費していることは間違いないということだ。

別の角度からは、ミネラルウォーターの採取による地下水の減少という問題も議論されている。

ミネラルウォーターとはつまり地下水である。実際にその採取によって地下水が減少するという現象は明らかになっていないが、森林の減少などが原因となって地下水が減る傾向は全国で見られるという。ミネラルウォーターの生産がこのまま増加すれば、地下水の減少に拍車をかける可能性もある。

国内産ミネラルウォーターのシェアNo.1の山梨県では地下水保護のため、森林整備事業を目的としたミネラルウォーター税の導入を目指していたが、ミネラルウォーターを製造する業界から公平性に関する疑問も投げかけられ、2006年には最終的に見送ることとなった。

最終的に実現しなかったにしても、これは一つのあり方ではある。資源である地下水を使う人がその環境負荷のコストを負担する。それで地下水という資源が維持できるなら、ミネラルウォーターを採取することに問題はないはずだ。

そして、より大きな視野で見るならば、「水を買う」ことをどう考えるかという問題に行き着く。

世界には安全な水を手に出来ない人々がまだまだ多い。その人たちに安全な水を届けることは世界が一致して取り組まなければならない急務である。そしてそれが実現していない原因のひとつに先進国が「水を買っている」ことにあるといわれる。ここで問題になっているミネラルウォーターのように直接水を買っていることについてではなく、食料などの生産のために必要となる水の問題、つまり「バーチャルウォーター」である。たとえば牛肉100kgを生産するのに必要な水は1600リットル、人が1日に必要とする飲み水の量は約2リットルだというから、この量が以下に大きなものかがわかる。

これはつまり飲み水の配分の不平等という問題だ。先進国はさまざまなことに「飲める水」を使い、途上国ではそれが不足している。

飲み水の不平等の解消という点ではVolvicの「1L for 10Lプログラム」が有名だ。これは、ミネラルウォーターの消費者がアフリカに飲み水を供給する事業に貢献することで、この不平等を解決しようという試みだ。

世界は水でつながっている。あなたが手にするその水が世界とどのようにつながっているのか、そのことがわかっていれば、あとはその人の選択の問題になる。私も発泡性のミネラルウォーターが好きで、これらかも買うと思う。でも環境負荷のことを考慮して製品を選びたいと思うし、飲むたびに安全な水を飲めない人々のことを考えて見たいと思う。たとえば自分なりに1本ミネラルウォーターを飲むたびにいくらかを募金するとか。

ペットボトルのキャップを集めてリサイクルするだけでも途上国の子供たちの支援が出来る。ミネラルウォーターというぜいたく品を飲むことができる幸せを噛み締めて、その幸せを少しでも多くの人に分けたいと思えれば、ボトル入りのミネラルウォーターを飲んだって後ろめたく思う必要なんてないと私は思う。

UNICEFを通じて、途上国の水問題を解決する。

市民科学研究室のウォーターマイレージについてのレポートを読む(PDF)