「電話してね」の携帯メールは南アフリカの命をつなぐツール

3,320 万人。これは、UNAIDSとWHOが合同で発表した報告書『AIDS epidemic update, 2007』に記載されている世界のHIV感染者の推定人口。カナダ全土の人口とほぼ同じくらいで、東京圏の人口の2倍以上だ。同報告書によると、主に予防と治療へのアクセス不十分が原因で、毎日約6千人の人々がエイズにより亡くなっている。

そんな悲しい現状を改善すべく、昨年10月に南アフリカ共和国で『Masilulekeプロジェクト』が開始した。現地の言葉であるZulu語で「希望」の意を持つ名前を与えられたこのプロジェクト、いったいどんな取り組みなんだろう?下の写真を見ると、携帯電話に関係あるみたいだけど??

greenz/グリーンズ phone message
PoP Tech Institute

プロジェクトの説明に入る前に、まず、南アフリカ共和国におけるHIV感染の現状について少し説明しよう。南アフリカは、世界一多くのHIV感染者を抱える国だ。2006年に周産期クリニックで実施した調査によると、妊婦の約3割がHIVに感染 していた。南アフリカ共和国にとって、HIV感染は、1990年代から深刻な問題だった。1994年には、すでにHIVとAIDSに関する国家戦略が策定されたほどだ。同国政府は2007年から2011年にかけての目標として、2011年までに年間感染者数の半減を掲げている

HIV/AIDSは、南アフリカ共和国にとって、国家戦略が策定されるほど深刻な問題なのだ。一方で、同国では、国民の2%しかHIV検診を受けていない。そして、HIV感染者の9割は抗レトロウィルス治療を受けていない。ほとんどの人が、末期的な症状になってから治療を受ける。HIV/AIDSがタブー視されていて、正しい情報や治療に依然としてアクセスしにくいことが主な原因のようだ。

Masilulekeプロジェクトは、この主な原因をとりのぞくためのプロジェクト。利用する媒体は、携帯メール!
というのは、南アフリカ共和国では、国民の約9割が、携帯電話を利用しているのだ。

南アフリカ共和国の人口は約4,800万人。そんなに多くの人々に携帯メールを送信するなんて、時間もお金もかかってしまいそう。でも、そこは知恵のしぼりどころ。Masilulekeプロジェクトは、この国特有の携帯サービスを上手に利用している。

南アフリカ共和国で使われている携帯電話は、95%がプリペイド式。ユーザーのほとんどは、通話料金を削るために、通話したい相手に「電話してね」という携帯メールを送信できる無料サービス『Please call me』を日常的に利用している。このサービス、なんと1日、3,000万回の頻度で利用されているそうだ。

『Please call me』のメッセージは、「Please call me xxxxxxxxx(電話番号)」のみ。1行で終わり。そう、携帯電話の画面には、まだまだスペースが!そのスペースにHIV/AIDSのヘルプラインやHIV検診の情報を盛り込んでしまうというのが、Masilulekeプロジェクトだ。詳しい内容は、プロジェクトを支援するPop!Techの会議でのプレゼンテーション動画をどうぞ。

Pop Tech Institute

プロジェクトの効果は、すでに表れている。10月から、毎日100万通の携帯メールに情報を流し続けた結果、ヘルプラインへのデイリーアクセス回数が、1,000回から4,000回に増えた。今後は、家庭でHIV検査ができるキットの配布サービスや、診察予約の確認メール配信も展開される予定だ。

ところで、HIV/AIDSは、ここ日本でも、まだまだタブー視されていたり、情報が行きとどいていなかったりするように感じるが、どうだろう?

たとえば、献血すればHIV感染が分かると誤解している人、けっこういるのでは?実際は、献血時に実施されるHIV検査の結果は、本人には伝えないことになっている。感染リスクのある人の検査目的の献血を防ぐためだ。

HIVに感染したら、必ず発病して死に至ると勘違いしている人も多いだろう。実際は、必ずしも発病するとはかぎらない。発病しても、症状を抑える治療はある。そして、まったく症状がなくても、人にうつしてしまう可能性がある。

厚生労働省エイズ動向委員会の調査によると、日本のHIV感染者数は9,426人。HIV 感染者の報告数は、1996年から毎年増加していて、2007年は1,082件で、はじめて1,000件を越した。

HIV/AIDSは私たちにとっても身近な問題。まずはきちんと理解して、自分のすべきこと・できることを考えよう。