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スーパーマーケットを寄付プラットフォームにするという発想

Waitrose

photo by John Lewis Partnership

Waitroseという英国で展開しているスーパーマーケットが”Community Matters“という寄付プログラムを始めている。これは、毎月Waitrose各支店が£1,000を寄付金として拠出しておいて、地元の福祉/コミュニティー/学校などに対して、買い物をした人の選択によって分配するプログラムである。

具体的に言うと、買い物をしたお客さんは、支払いが終わるとTokenを渡される。3つの団体にそれぞれ割り当てられたPerspex tubes(透明なアクリル製の箱)の中から、関心がある(寄付したい)団体やプロジェクト1つを選んで、その箱にTokenを入れる。毎月末に、それぞれの団体にどれだけTokenが投じられたかを重さで計り、その重さの割合に応じて£1,000を分配する仕組みのようだ。3つの団体/プロジェクトは、お客さんによって選択され、最終的にはWaitroseの各地域のPartnerによって決定される。

毎月£1,000ということは、日本円に換算すると19.2万円程度。年間で1店舗あたり230万円程度で、現在Waitroseは英国でおよそ200店舗展開しているので、全ての支店でこのプログラムを展開するとなると、毎年4.6億円が買い物をしたお客さんの選択によって、地域の団体/プログラムに寄付されるということになる。

英国の小売事情をざっと調べてみると、TESCOASDASainsbury’sMORRISONSWaitroseMarks & Spencerなどがある。日本の経済ニュースでも頻出しているTESCOは、言わずとしれた巨大スーパーマーケットであり、一方Waitroseは、高所得者層をターゲットにした都市部を中心に展開しているスーパーマーケットという位置付けである。一般的に高所得者は高学歴であり、社会問題にも関心が高い。それが故に、こうした寄付プログラムは、Waitroseを利用する人の問題意識に刺さりやすく、結果的にWaitroseのブランドロイヤリティーを高めることにも繋がると思われる。

米国のオーガニック&ナチュラルフーズ専門Whole Foods Marketも”Wooden Nickel Program“という似たようなプログラムを展開していたようだ。買い物袋を持参するとWooden Nickel(木製の5セント)をもらうことができ、3つのNPOの中から選択して寄付することができる仕組み。Whole Foods Marketも高所得者をメインターゲットとしているスーパーマーケットなので、Waitroseと非常に似たモデルだと言える。このプログラムは全ての店舗で実施されているものではなく、店舗によっては「5セントの割引」と「Wooden Nickel」のどちらかを選択するという方式をとっているところもあるようだ。

日本はどうかというと、イオンが「イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン」という似たようなプログラムを展開している。毎月11日のイオン・デーに、地域のボランティア団体などの名前と活動内容を書いた投函BOXを店内に設置。買い物客がレジ精算時に受け取った黄色いレシートを、自分が応援したいと思うボランティア団体の投函BOXへ入れると、買い物の金額合計の1%の額に相当する希望の品物が、その団体に寄贈されるという仕組み。寄付先の団体として登録するには、団体登録の申し込み書を実施店舗のサービスカウンターで提出し、店長や従業員のよる面接などによって決定される。

イオンのような大きなスーパーマーケットは、大多数の地域住民が買い物に行くようなところである。そういう場所において、買い物という日常的な行動の延長線上に、地域住民の関心が高い地元の社会問題について、毎月繰り返し意識喚起する機会を作っている。そしてその問題について地域住民が”自らの選択”によって寄付という行動を起こすことが出来る導線を設計できているのは、WaitroseやWhole Foods Marketのケース同様に画期的である。2007年度は登録団体数が18,767、投稿レシート金額が約211億5,779万円、贈呈相当額が約2億1,306万円。2006年度の実績と比較すると、贈呈相当額が1億円以上も増えており、今後もその額は伸びていくことが予想される。