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スモール・イズ・ビューティフル!

持続可能な社会へ! エコビレッジ国際会議TOKYO2006(2)マルチ・ミューラー
作家、写真家、そしてGEN(グローバルエコビレッジネットワーク)の評議員と、様々な顔を持つマルチ・ミューラー氏。現在はフランスとインドのエコビレッジ「オーロビル」とを行き来しながら、様々な環境・社会活動を展開している。この日はたくさんのスライドを交えながら、世界各国のエコビレッジを紹介してくれた。
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「森が失われていく、自殺、子どものストレス、小規模農家が失われていく、家族や友人と過ごす時間が少なくなっていく……」
と現状の問題を指摘した後。
「暗い話はこれくらいにして、悪いニュースから良いニュースに!」
と会場を盛り上げ、エコビレッジについて語り始めた。

世界のエコビレッジ

エコビレッジはひとつのコミュニティー。そのあり方は『持続性プラス』。環境からもらう以上の物を自然に返すことを大切にしているという。彼女が評議員をつとめるGENには世界で1500のコミュニティーや団体が登録しているそうだ。

「エコビレッジの豊かさは、自分達の必要なだけあるということ。そしてそこに住む人達は、積極的、ソフトで人にやさしい形をとりながら、政治的・社会的な行動を始めます。「私一人」でなく、「私たちみんな」のことを考えます。それがバイオリージョン(生命地域/自然の生態系から人間の営みまでを含めた生命圏)、そしてやがてはグローバルなネットワークにつながります。ヴィジョンをシェアし、将来を一緒に計画することで、みんながグローバルファミリーの一員になることができます」

大半のエコビレッジにはいつくかの共通点があるそうだ。自然生態系を重視していること、人間同士のつながりを大切にしていること、またメディテーションや芸術など、精神的、文化的な営みを大切にし、教育にも力を入れていることなど。

中にはなんと、移動式のエコビレッジもあるのだとか! メキシコから中米、コロンビアやペルー、チリ、ブラジルなどを入れ替わりたちかわりで、60人くらいの人が移動している。このグループは最終的にはアフリカに行く予定で、誰でも参加できるそうだ。

紹介されたエコビレッジをいくつかあげてみよう。インドのオーロビル、南アフリカのアイボリーパーク、スコットランドのフィンドフォーン、イタリアのダマヌール、ドイツのレベンスグガ―デン、デンマークのコーハウス・ムーブメント、アルゼンチンのガイア、移動エコビレッジのラ・カラバン、メキシコのウェイコテュ、アメリカではNYのイサカ、テネシーのザ・ファームなど。

2枚の写真はオーロビルでの風景
大人も子どももアートワークを楽しむ

エコビレッジのつくり方、暮らし方

もちろん村ではビジネス活動もしている。イタリア北部のエコビレッジでは、チーズを作り、市場やデューティーフリーショップで売っている。テネシーのエコビレッジには豆腐工場もあるそうだ。自然保護、動植物が生存できる保護区をつくることで、エコツーリズムで収入を上げているところもある。そして村の大事な決定事項は、みんなで話し合って決定しているところが多い。

「エコビレッジはクロスカルチャー、マルチカルチャー、多人種、若い人も年を取った人もいます。多くの人が一緒に暮らすことは、クリエイティブなことも起こるし困難でもあります。でもどうやって一緒に暮らしていくのかを学び合っているので、そういった困難も克服していけます」

様々なバックグラウンドを持つ人が集まってできたコミュニティー。ではどうやってつくりあげたのだろうか?

「資金源はまず、自分達のお金を元手にする、参加者が稼ぐお金をまとめて貯める、村で小さな事業を始めるなど……。寄付などでもいろんなところからお金が集まります。助成金が国際機関からくるし、企業と協力することもできます」

「エコビレッジ建設に対してよくある質問は、例えば、老後はどうなるか? コミュニティーの中の安全、安定、倫理道徳はどうなのか? 集団に属しながらも個人であり続けることができるのか? 本当に集団生活コミュニティーの生活がうまくいくのか? お金は見つかるのか? 一緒に暮らせるようなちゃんとした人が見つかるのか? 他の場所ではうまく行くけど、日本ではだめなんじゃないか? いろいろな疑問をぶつけれるんですけど、みなさんは潜在的な可能性を秘めています。逆に世界のエコビレッジ運動のリーダーになる可能もあります」

日本でのエコビレッジの可能性

伝統的、そして同時に現代的でもある日本を彼女は「バンブーハイテク」と呼ぶ。最先端でありながら伝統的で慣習的な物を重んじること。自由で創造性に富んだ芸術の世界。島国で古い歴史を持つこと。秩序だった国でありながら、韓国や中国との未解決の問題も抱えている。日本をそう評しながら、

「日本人はかつて、自然に近いところで暮らしていました。里山の概念がすばらしいのです。座禅、瞑想、武術が得意でエコビレッジの考え方にうってつけの国ともいえます。広島、長崎など戦争で大変な影響を受け、コミュニティや平和を模索するニーズがある。世界に対するモデルになる可能性を持っています。伝統的な価値観にもう一度戻りましょう」

「日本では使わない農地を転用してエコビレッジにすることができるので、小さな町の周辺にエコビレッジをつくれるようになるかもしれません。また東京は小さな区画があって、その中に小さな町がある。街の中に集団住宅があり、村に農園があって自転車でその間を行き来することも可能でしょう。パリに行くと大きな街としか思えない。NYもです。しかし日本には銀座のような繁華街もありますが、その中に小さな町がある。それをエコビレッジに活用できるんではないでしょうか?」

「日本が特に注意しておかなければならないこともあります。魚を海で捕りすぎない、近隣諸国で有害物質を吐き出さない、遠い国の森を破壊しないなど、課題も持っています」

彼女は日本人の幼い少女の写真を写し出してこう語っていた。

「社会そのものが変わっていかなければなりません。そうしなければ世界全体の健全な姿は取り戻せません。”small is beautiful=小さいことこそ美しい”千里の道も一歩から。この小さな女の子には、すばらしい将来が待っています。みんな一緒にがんばりましょう。そして日本でエコビレッジを育てていきましょう」

食料の生産、水や電気などのライフライン、ゴミや排泄物の処理など、現在の私たちの生活は自分から遠い地域に依存している部分が多い。しかしそれらを小さな地域の中での循環に移行し、身近にある人と人とのつながりを大切にする事で、自然との調和や助け合い支え合うことで生まれていた、かつての豊かさを取り戻すことができるのではないだろうか。そんな小さな循環が、「私」から「私たち」に変わる事で世界は変わっていく……。ミューラー氏の言葉『small is beautiful』には、そんなメッセージが込められているようだった。

*トップ画面と文中に使用しているオーロビルの写真は、マルチ・ミューラさんより提供いただきました。

<関連 Webサイト>
パーマカルチャー・センター・ジャパン
http://www.pccj.net/index.html
グローバル・エコビレッジ・ネットワーク(GEN)
http://gen.ecovillage.org/index.html
グローバル・エコビレッジ・ネットワーク・ジャパン
http://ecovillage-japan.net/gen/index.html
BeGoodCafe
http://www.begoodcafe.com/area.php?area=00&vol_num=094

問い合わせは下記へ
<主催>BeGood Cafe
http://www.begoodcafe.com/
<共催>パーマカルチャー・センター・ジャパン
http://www.pccj.net/index.html

greenz 『エコビレッジ国際会議TOKYO2006』レポート
No.1 糸長浩司
https://www.greenz.jp/index.asp?REPORT_NUM=338