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日本に潜む可能性「里山エコビレッジ」

持続可能な社会へ! エコビレッジ国際会議TOKYO2006(1)糸長浩司
2006年10月28日(土)、29日(日)gloval ecovillage network(GEN) からのゲストも迎え、日本で最初のエコビレッジ国際会議が開かれた。2日とも前売りは完売。地球と共に生きるエコロジカルスペースをつくり出したい、自らがよい方向へと変化していきたいという思いを持った人達が全国から参加。熱気あふれる会場で行われた講演の模様をシリーズでお伝えしていく。

会議初日のテーマは『世界のエコビレッジ 軌跡と未来』。海外でエコビレッジの創設や運営にたずさわってきたゲスト4人の講演が行われた。それに先立ち、NPO法人パーマカルチャーセンタージャパン代表で日本大学生物資源科学部教授の糸長浩司氏から、パーマカルチャーとエコビレッジについて、そして日本でのエコビレッジの可能性についての講演が行われた。

エコビレッジの目指すもの

まず、「本当の意味でのサステイナブル(=持続可能な)というのは何なのだろう?」という根源的な問いが投げかけられた。

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「サステイナブル、これに近い言葉がパーマカルチャーの「パーマネント」です。「パーマカルチャー・アグリカルチャー」は、アメリカのキング博士が第二次世界大戦前に日本と韓国、中国とを旅した後に『東亜四千年の農民』という本を出し、その副題としてつけた言葉。アメリカの農地は当時、化学肥料で疲弊していました。一方のアジアは何千年も暮らしている地域。

農業にも何か秘密があるに違いないと、探りにきたんです。人間の排泄物を堆肥として利用していたアジアの農業には、自然と人間の営みとの循環が見られる。彼はそこから「パーマネントアグリカルチャー(permanent 永久の、agriculture 農業)」という名前を思いついたのです」

「日本の翻訳者、杉本俊明はこれを「停滞農業」と訳しました。訳としては正しいのですが、右肩上がりの経済成長がよいとされた当時では、「その経済成長を止めるのか」と、こういう考えは余り評価されなかったようです。そして、経済成長のピークを過ぎた今、我々が維持しないといけないのはピークの状態なのか、という問いが出ています。自然と恵みをどう持続的に使うのか、昔ながらの知恵を活かしながら、かつ新しい知恵を使いながら、「下降、縮小経済」をつくるために考えなければならないでしょう。「パーマカルチャー」「エコビレッジ」はそのひとつの方法論として、あるいは姿として描くことができるでしょう」

グローバリゼーションの広がりとライフスタイルチェンジ

現在の世界が直面している「グローバリゼーション」。世界的な経済の流れの中で、以前は国で決めていたことが国で決められない局面が発生している。それは当たり前のように思っている私たちのライフスタイルにも、実は大きな影響を及ぼしているのだ。

「朝起きて、歯を磨いて、電車に一時間乗って、仕事にいく。その生活のリズムを決めたのは誰なんでしょう? 人間の生きるリズムはその人の労働や生活によって生活のリズムは刻まれるものです。お百姓さんなら、朝飯前に仕事をして、適当に汗をかいて、ごはんを食べて仕事をするでしょう。それを画一的にしたのは産業労働者を大量に送り出した、産業革命以降の資本主義。そのリズムをおさめるためのシステムと人工的な空間づくりを、近代化は進めてきたんです」

「今あるグローバリゼーションに対し、民衆が、自分達の特異性を尊重して、コミュニティーをどう再生するかが大きなテーマになっています。その「再定住」の回答として、エコビレッジ、パーマカルチャーがあるんです。生活者自身が、自分達で自分達の生きるすべを作り出していく……。大規模でなく、小さなものでいいんです。地域が紡いできたもの、また、地域に合ったものを創造していくことがその鍵になります」

「エコロジカルフットプリント=地球環境に残す人間の足跡」つまり人間が環境に与える影響。私たちが家や街を建設する時には、建築資材の調達や環境を変化させることにより、大かれ少なかれ環境に影響を及ぼしている。私たちの生活や経済活動そのものが、環境に負荷を与える要因にもなっているのだ。経済振興とエコロジカルな生活をどう両立していこうかというのも、エコビレッジのテーマのひとつになっている。

日本が持つエコビレッジの潜在性

人口の減少、そして都市への集中と農村の過疎化が進む日本。エコビレッジが日本で展開し、根付いていく可能性はあるのだろうか?

「エコビレッジを定着させていく方法は、どうエコビレッジをつくるか、そして今ある社会をどうエコロジカルにしていくかのふたつになります」

「日本には13万5千の農村があり、現在の農村は再定住化がテーマのひとつになっています。今まで我々が紡いできた集落の暮らし。それをどれだけエコビレッジ化していくかが重要になります。農村には先人の知恵や様々な材料があります。これからは、今まで引き継がれた知恵を次の世代につなぎながら、グローバルな視点を育てていくことを大切に考えなければなりません」

「一方の街では、老朽化した団地も多くみられます。都市の中にどれだけの持続可能な環境をつくっていけるかという意味で、団地のエコビレッッジ再生も鍵になります。農村と都市にエコロジカルな住空間があり、それがバイオリージョン(生命地域/自然の生態系から人間の営みまでを含めた生態地域、流域圏的とらえ方)的につながっていく。日本はそれが見えやすい国なんですよね。日本にちゃんとしたエコビレッジができなければ他の国ではできないくらいの誇りを持ってやっていきたいと思っています」

日本の里山は食べられる森と呼ぶ糸長氏。縄文時代から、栗の木を植えて食料をとっていた日本の里山文化こそが、知恵を活用したエコビレッジ、教育の場、新しい共有財産を作っていく鍵となるという。長い日本の文化と知恵を含めた希望として、「里山エコビレッジ」を地域社会と一緒に広げていきたいと締めくくった。

<関連 Webサイト>
パーマカルチャー・センター・ジャパン
http://www.pccj.net/index.html
グローバル・エコビレッジ・ネットワーク(GEN)
http://gen.ecovillage.org/index.html
グローバル・エコビレッジ・ネットワーク・ジャパン
http://ecovillage-japan.net/gen/index.html
日本大学生物資源科学部生物環境工学科建築・地域共生デザイン研究室
http://www.brs.nihon-u.ac.jp/~areds/
BeGood Cafe
http://www.begoodcafe.com/area.php?area=00&vol_num=094

問い合わせは下記へ
<主催>BeGood Cafe
http://www.begoodcafe.com/
<共催>パーマカルチャー・センター・ジャパン
http://www.pccj.net/index.html