夢はエコビレッジ! 安房鴨川の新たなチャレンジ

みんなが望むものを、みんなの力で! つながりを大切にしたコミュニティーが、エコビレッジへ向けて動き出す。
リゾート、サーファー、千枚田……。そんな言葉を思い出す、千葉県の南に位置する安房(あわ)鴨川市。首都圏やその他地域からの移住者も多いこの地域で、エコビレッジ構想が生まれているという……。地域通貨「安房マネー」が流通する『あわのわマーケット』で話を聞いてきました。

千葉県の南にある安房鴨川市。海と山に囲まれ、温暖な気候に恵まれたこの地域は、東京から近いリゾート地として、またサーフィンのポイントとしても知られている。そしてもうひとつの顔が、「日本の棚田百選」にも選ばれた大山千枚田、故・藤本敏夫さんがつくった「鴨川自然王国」など、新しい形の農業でにぎわう土地としての一面だ。

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3.2ヘクタールに375枚ある棚田をオーナー制やトラスト制で運営し、体験学習のフィールドとしてもコーディネイトしている「大山千枚田保存会」。そして有機栽培野菜の宅配とともに、里山帰農塾を開催し、土に触れる喜びを伝えている「鴨川自然王国」。田植えが行われるゴールデンウィークには両会の会員が首都圏からどっと押し寄せ、尾根筋を走る細い山道は車でいっぱいになるのだとか。もちろん作業は機械を使わず手植えで行われる。都会で暮らし、普段の生活で農業に触れることのない人達には、自然とのつながり、生命の息吹を感じるかけがえのない時間となるのだろう。

そしてそんな土地柄に魅かれてか、農業をしながら自分の好きなことを仕事にして暮らすという「半農半X」的な生き方を指向する人達の移住が続いている。彼らの多数が、空き家になっていた家や、その近くの田んぼや畑を借り、時には自分で家を直したりしながら新しい生活を開始している。この動きは15年ほど前からすでに始まり、現在まで続いているのだそう。

鴨川自然王国には学生もよく訪れている

移住する人達の年代も幅が広く、定年を間近にした団塊の世代、子育て中のカップル、20〜30代の若い人達と世代に切れ目がない。そしてもうひとつ興味深いのが、ほとんどの人が自分の特技を活かして人と交流し、農作業や物販、そしてコンサートなどもお互いに協力し合いながら開催していっていることだ。この地域に元々あった町内の寄り合い組織「組(くみ)」にも参加するなど、移住者だけで固まることなく、現地に長く住んできた人達との関係も大切にしながら、田舎での暮らしを楽しんでいる様子は、訪れる度になぜかほっとさせられる。

<写真>左は鴨川で純正の蜂蜜を作っている「蜂人舎」桑原さん。右は色鮮やかなガラス作品が並ぶ「SHANTI GRASS」

そしてそんな中で生まれたのが「安房(あわ)マネー」という地域通貨。

政府や中央銀行が発行している法定通貨と違い、地域通貨は地域や特定のコミュニティーが自主的に発行しているもの。そのメリットとしては、全国で流通している法定通貨は、現在の市場システムに乗っているので、大企業や大都市にお金が集まりやすいのに対し、地域通貨は特定の地域や団体で流通するので、地域にお金が残りやすい。また、現金に変えにくい労働を評価することもできるので、新たな流通や人の交流を生むものとしても期待されている。

流通のルールは様々だが、例えば、普段の生活では車は必要ないから持ちたくないという人だったら、大きな荷物を運ぶ時や遅くに帰宅した時だけ、車を持っている人に地域通貨を使って運搬をお願いする。そして、自分がもし子ども好きだったら、その人が外出する時に子どもを預かって面倒をみたり、パソコンが得意だったら、ホームページをつくってあげるなどして獲得することができる。仕事としてお金にならない部分、またお金にはしたくない部分で、自分たちのできることをお互いに提供し合いながら、コミュニケーションをはかる道具として活用できるのだ。

東京では、先日お伝えしたアースデイマネーの発行する“r”“やナマケモノ倶楽部が運営する“ナマケ”、同じ千葉県では習志野市のNPO法人、ボーンセンターが運営する“ピーナッツ”などがあり、全国の地域通貨を紹介したホームページなどが登場するほど、各地で様々な取り組みがされている。海外ではもっと進んだ取り組みもみられる。10月の「エコビレッジ国際会議」でも紹介されていたアメリカ・ロサンゼルスの“イサカアワー”は生協の運営するスーパーで通用する貨幣として生まれたもので、オーガニックファームの融資などにも使われているのだそう。

『あわのわマーケット』でも、多くの店舗が「安房マネー」を使用している。ここに出店しているのは、鴨川に移り住んできた人や近郊地域に暮らす人が多い。商品は自分でつくった農産物、天然酵母のパンや当地でつくった蜂蜜などの食品、衣類、クラフト、イラストや絵本など。中には自作の映像作品を持って来てパソコンで上映会をする人もいた。

会場の中では雑貨、ランチプレートも販売!

<下段写真>左より…「かまどの火」の天然酵母のパンはあっという間になくなる/タロット占いの青木れいのさん。私が今の仕事に就くのも当てられたようなもの/見上げた空の「この色が出したくて」。kittaさんの草木染めはどれも鮮やか。

会場で「安房マネー」の発起人で、鴨川エコビレッジ構想の発案者でもある林良樹さんに話を聞いた。林さんと奥さんの菜穂さんは、夢と理想の住処を求めて国内、そして海外を旅した後、1999年、鴨川の古民家を借り、現在のライフスタイルにつながる暮らしを開始したそうだ。

――林さんが地域通貨をつくったきっかけを教えてください。

 「安房マネー」の発足は2002年。鴨川には新しく移ってきた人もたくさんいます。その人達が自分にできることを提供し合いながら、お互いに支え合うこと、また鴨川に活気が生まれるようになればと思い設立しました。「安房マネー」には現在150名以上の人が登録してくれています。

私たちは会員だけでなく、地域の人ともつながっていきたいと思っているし、ここには、忙しい東京の暮らしから離れたいと思って移ってきた人達もたくさんいます。それなのに東京まで行かないとおもしろいイベントがない、自分のつくった物をお金にするチャンスがない、というのではつまらない。そんな思いから、有志で、誰でも気軽に立ち寄ってくれるようなマーケットを開くことにしました。このマーケットは10月から始まった新しい試みです。まだ十分につながっていませんが、これからいろんな人達との交流を広げていきたいと思っています。

――エコビレッジにはどんなイメージをお持ちですか?

 まずいろんな事業ができる形態でNPO法人を立ち上げたいですね。そして、みんなが必要としていることから取りかかっていきたいと思っています。まずはバイオマス(植物由来資源。植物性の廃食用油からつくるバイオディーゼル燃料など)からかな。ここは海も山も近くて自然も豊かに残っているし、いろんな人がいるから……。みんなが望むことを実現しながら、一人一人の能力を活かしていったら、鴨川らしいエコビレッジができると思いますよ。

林さんとの話が終わった後、出店者の一人にエコビレッジとNPOのことに聞いてみると、

出店者 (エコビレッジのことは)聞いてるよ。参加名簿にも登録したし。(隣の出店者に向かって)登録した? 楽しみだよね。バイオマスは早くほしいね。

と、なんとも明るい答えが返ってきた。こんな雰囲気なら、地域にも受け入れられながら、新しい取り組みを進めていけることだろう。

そして、活き活きと原っぱを走り回る子ども達、子ども達の面倒を見ながら一緒に遊ぶ大人の姿……。安心して過ごせる空間と時間はすでに作り出されているようだ。

最後に『地域通貨 安房マネー』のホームページに掲載されている言葉を紹介しておきたい。

地域通貨は、お金(円)のようにも使えますし、
物々交換のようにも使えます。
でもどちらにも属さないまったく新しい道具です。
お金(円)のように、取引されている数字には価値はありません。
地域通貨の場合、みんなの間をめぐっているエネルギーにこそ価値を見出せます。

試みはまだ始まったばかり。夢へ向かう今後の活動に期待しつつ、見守っていきたいと思う。

各団体の活動については下記ホームページへ

安房(あわ)マネー
http://www.awa.or.jp/home/awamoney/
鴨川自然王国 
http://www.k-sizenohkoku.com/
大山千枚田保存会
hhttp://www.senmaida.com/index.php

地域通貨についての情報は

アースデイマネー
http://www.earthdaymoney.org/
ナマケモノ倶楽部
http://www.sloth.gr.jp/
ボーンセンター
http://www.jca.apc.org/born/lets/lets_index.html
地域通貨全リスト
http://www.cc-pr.net/list/
イサカアワーズ(英語)
http://www.lightlink.com/hours/ithacahours/