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一人でも多くの人がハッピーになるビジネス

より良い社会のために、お金以上の意味があるビジネスとは?
今回で2回目になるこの企画は、社会的、環境的なテーマをビジネスに結びつけることで有名な企業である「ザ・ボディショップ」という企業を通して、「ビジネス」ってなんだろう、CSR、社会貢献、そして「商品を買う」という事がどういうことなのかを考えていく。今回は「ザ・ボディショップ」が考える「コミュニティ」について考えてみよう。

※上の写真 1996年、迫害に苦しむナイジェリアの少数民族「オゴニ族」を支援するグローバルキャンペーンを実施した際のオゴニの人々の笑顔

そもそもコミュニティってなんだろう

連載第1回目で、ザ・ボディショップの始まりからたどってみると、彼らの価値観の中心にある考え方は「コミュニティ」にあるようだ、ということがわかった。「コミュニティ」という言葉は、ひとつの作業を共同で取り組むという意味の言葉から生まれた。それは家族かもしれないし、ご近所さんかもしれないし、友人同士やNPO、企業でもいい。みんなでみんなのことを考えるのが、コミュニティの自然な姿。大げさに言えば、みんなが幸せに生きるために、分かち合い、助け合い、努力するのがコミュニティなのだ。利益を出すことが企業の至上命題になっている現代社会の中で、「どれくらい利益を上げたかよりも、どうやって弱く力のないコミュニティと接してきたかで評価されたい」と語るザ・ボディショップにとって、この「コミュニティ」はとても重要な概念だ。

職場、取引パートナー、そして世界というコミュニティ

アニータによれば、ザ・ボディショップには職場、取引パートナー、世界という3つのコミュニティがあるという。まず、職場というコミュニティ。ボディショップ第1号店がそうであったように、ザ・ボディショップの職場は「特別な場所であり、創造性や楽しさにあふれた(中略)人間の精神の保育器でなければならない。職場とは、両親が働き、子育てを支援し、家族が温かく迎えられ、大切にされ、守られるべき場所」なのだ。

取引パートナーとのコミュニティ

次は、取引パートナーとのコミュニティ。ザ・ボディショップは現在、世界中で24か国で31の経済的に困窮したコミュニティと取引を行っている。たとえば、ザ・ボディショップにシアバター(ナッツから採れる油脂。現地では整髪や肌の乾燥を防ぐために使われている)を提供しているガーナの女性たちの協同組合。彼女らとの直接取引には、お金以上の意味がある。

ガーナの女性たちの協同組合

貧困状態にあった彼女らだったが、この取引によって子どもたちの教育の機会が拡大し、健康を維持するためにお金が使われ、文化的なさまざまな習慣を守ることにもつながっていった。こういったコミュニティとの取引は、彼女らが経済的に潤うということだけでなく、間違いなくコミュニティの未来をつくっていくことでもあるのだ。

「私たちは世界に2100の店舗を持ち、大きな購買力を持っている。そして取引によって世界を変えられるコミュニティから品物を購入したい。私は小規模な経済的取り組みには力があると信じている。10人の女性が木を植え、12人の若者が井戸を掘り、1人の老人が近所の子どもに読み書きを教えるーーひとつひとつを見ると、これらの草の根的取り組みは小さいことだ。しかし全世界規模で考えれば、これらのスケールと影響力はとてつもなく巨大だ。これらの小さな活動が、貧困をなくし、よりよい社会をつくるという戦いの最前線となる」。

世界というコミュニティ

そして、世界というコミュニティ。ザ・ボディショップは、自らがモデルとなることで、ビジネスを私利私欲を満たすための手段から、公共の利益を実現するための手段にシフトしようとしてきた。

1995年に出版された『バリューズレポート』

中でも画期的だったのは、他社に先駆けて1995年『バリューズレポート』を発行したことだった。これは財務報告書とは別のレポートで、従業員、株主、取引業者、地元のコミュニティまで、ザ・ボディショップに関係するすべての人々に対するインタビューや同社の社会的、環境的活動について中立的な第三者の研究所で分析したデータを含む報告書だ。今でこそ企業が環境報告書やCSR報告書を出すのは当たり前になったが、同社が発行している『バリューズレポート』ほど正直で積極的、大規模なレポートはまだ、ほとんどない。

また、96年と97年の2年連続で国連環境計画(UNEP)の調査による環境問題に対して積極的な企業のランキングで、1位を獲得している。「私たちの調査でも、社会的・環境的な責任を負うことで得られる短期的利益はほとんどないことは明らかになっている」とアニータが語るように、株主の利益を守りつつ、環境問題と社会問題に対して責任を果たすことは簡単なことではない。それでは、ザ・ボディショップは、なぜこのような方法を採るのだろうか? アニータの答えは簡単だ。「それが人間らしいビジネスのやり方だと感じているから、こういう道を選んでいるのだ」。

コミュニティの一員として行動する

現在、ザ・ボディショップは世界54か国に2100以上の店舗を持つが、そこに供給するすべての商品の開発過程で動物実験が行われていないのはもちろん、原料は持続可能な方法で生産されているか、木材は認証済みのものか、仕入れるものが従業員の人権を侵害する体制下で生産されていないか、などを確かめている。それは、2000社以上ある取引先の信頼性を保証することになる。その根底にあるのは、世界中の一人ひとりが、一人でも多く笑顔で暮らせるように、という思いからだ。その思いを集約してまとめたのが、ザ・ボディショップが掲げる「5つの基本理念」(バリューズ=価値観)だ。

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「心を込めて、情熱をこめて」というバリューズのロゴ

企業の責任は収益を生むことだけでなく、コミュニティに属する一員として、社会変革のため、環境保護のために活動していくことにある。コミュニティの一員として、果たすべき責任を果たそう、という宣言だ。

次回は、ザ・ボディショップが実際にどのようにコミュニティをビジネスにつなげているか、レポートしていく。

ザ・ボディショップ
http://www.the-body-shop.co.jp/top.html

ザ・ボディショップ Valuesについて
http://www.the-body-shop.co.jp/values/index.html

ザ・ボディショップ 「コミュニティトレード」について
http://www.the-body-shop.co.jp/values/com_trade.html

「THE BODYSHOP モノ語り」
第1回目はこちら → 「ザ・ボディショップってナニ?」