美しい、エコな針仕事

韓国の伝統パッチワーク “ポジャギ”
お隣の国、韓国の意外と知られていないパッチワーク、“ポジャギ”。細やかな針仕事と色使いの裏には、いにしえの女性たちの知恵がありました。

「私、今、ポジャギを縫っているんです」

私のその言葉を聞いた時の、ほころぶような姑の笑顔を、いまだに忘れられない。初めて縫った、そのいびつなポジャギを手に取り、姑は目を細めて「まあ、キレイに縫えてるじゃないの」と言ってくれた。

私は韓国人の夫と結婚し、2004年から2005年までをソウルで過ごしたが、さまざまな韓国の美しいものに触れる機会を得た。“ポジャギ”も、そのひとつ。ポジャギとは、基本的には「物を包むための布」のことで、日本の風呂敷のようなもの。その中でも私が特に心を惹かれたのは、パッチワークのようにハギレを繋ぎ合わせて作るポジャギだった。特に、裏地のない一重のポジャギは、縫い代を噛み合わせるようにして縫うため、光にかざすとまるで布でできたステンドグラスのような、柔らかく美しい風合いを持っている。

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パクチをおへそにした針刺し

もともとポジャギは、昔の女性たちが韓国の民族衣装「韓服(ハンボク)」を作った時に出るハギレや余り布、または古着を大事に保管しておき、それを再利用するために縫い合わせたのが始まりと言われている。韓服の素材となる麻や苧麻(モシ)、絹などは当時貴重だったため、女性たちはどんな小さな布の端でも捨てることはせず、取り出しては並べ、色合わせを楽しんだのであろう。例えば、「パクチ」と呼ばれるポシャギには欠かせない装飾があるが、これもわずか4cm四方ほどの小さな布を器用に端から丸め、折り、広げて作るのである。出来上がりはたった1cmほどのパクチだが、大事な飾りであり、また福を呼ぶおまじないの役割まで果たしている。こんな小さな、そして愛らしい形のパクチひとつにも、昔の韓国女性のつつましさや工夫が垣間見えるようではないだろうか。

仁寺洞の土産物屋の店先。カラフルな根付けなどが並ぶ

現代の韓国では、ポシャギは「伝統工芸品」「芸術品」または「土産物」として注目されるようになっている。ソウルの仁寺洞(インサドン)というエリアにはお店やギャラリーが所狭しと並び、芸術品から気軽に求められる小物まで、さまざまなポジャギが手に入る。緑に囲まれた、しんと静かなギャラリーで、日に透ける麻のポジャギを眺めていると、この国の伝統を愛する心や古いものを大事にする心が、しっかりと生きているのを実感する。

韓国女性の手が生んだ、美しくあたたかなポジャギ。ゆったりとお茶を淹れてくつろぎながら、あるいはいろいろと考えごとをしながら。静かに針を動かしていると、あっという間に時が経ってしまうこともしばしば。物を無駄にしないというエコな発想から生まれながら、芸術品にまで昇華したポジャギに、ぜひ挑戦してほしい。

福ジュモニ
http://www.bokjyumoni.com/
韓国伝統雑貨を扱うオンラインショップ「福ジュモニ」では、ポジャギ用の布やキット、ミニポジャギの購入ができる。ポジャギの縫い方などを詳しく解説したリンク集も充実。店主のMrs.Goldさんこと金雅子さんも、韓国人の旦那様と国際結婚され、ポジャギの美しさに魅せられたひとりだ。

ライタープロフィール
長峰環(ながみねたまき) オーストラリア、シドニー在住
フリーライター。2004年韓国人の夫と結婚しソウルに住んだ後、2005年初めにシドニーへ移住。3つの言葉、3つの文化に囲まれながら暮らしている。韓国やオーストラリアの文化、習慣について執筆経験あり